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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第30章 マイスターの悔恨
「あ、やだ、やあああ、え、ああっ、ああああんっ!!」
ひときわ高い声を上げて体をびくびくと震わせたスグリ姫は、全身をぎゅっと強張らせ、やがてくたんと脱力しました。
彼の指を飲み込んで滴るほどに潤った桃色の襞は、ぴくぴくと痙攣しています。
「…は、」
知らないうちに止めていた息を吐いた彼がそこから指を抜こうとすると、柔らかく狭い姫の内側が、引き止めるようにきゅっと締まります。
躊躇いながら指を引き抜くと、姫の体がぴくんと小さく揺れました。
「…大丈夫、か?」
小さく声をかけてみましたが、姫からの返事はありません。
相変わらずぐったりとした体を眺めながら、施した目隠しを外しました。
すると、目隠しには涙が滲み、陶器のような薄い瞼は、上気して赤くなっておりました。
幼馴染の婚約者と最初から知っていながら、請われるがままに果物細工を教え、近しく過ごす時間を持ちました。バンシルが居たこともありますが、二人きりで過ごした時間の方が、遥かに長く有りました。講座のことを口止めしたのは、「女子には果物細工は教えない」という、地元の不文律も理由のひとつではありましたが、どこかに後ろめたい気持ちがあったからでもありました。
涙を滲ませた睫毛、桃色に染まった頬と瞼、軽く開かれた花弁のような唇を見ていると、強い罪悪感と共に、絶望的なまでに激しい恋情が彼の胸を突き上げました。
温かく、ぐずぐずに泥濘んだ内側を彼に明け渡し、彼の指や舌に快感を委ねていても、目の前の女は、最後に彼女の婚約者の名を――彼ではない、別の男の名を、呼んだのです。
「……馬鹿野郎…っ」
彼は、そう口に出してから、頭を振りました。
(馬鹿は、俺だ。分かってた筈だ、俺がこいつの相手になんざ、なれる訳がねぇと)
外したばかりの目隠しは涙と体温で温かく、先程姫が剥いたオレンジの残り香を濃く纏っていました。
その目隠しの涙の跡を指でなぞると、姫に触れてからずっと張り詰めていた彼の中心が、欲の行き先を求めてはち切れそうに膨らみを増しました。
「くそ、っ…」
目の前には、埋めてくれるものを求めて誘っているかのように、ひくひく蠢く温かな入り口があります。
その主である姫は、未だ目を閉じたまま、頬を染めて長椅子に横たわっています。