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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第30章 マイスターの悔恨
姫の方を見やると、特に何かに気付くこともなく、長椅子にくたりと身を預けています。
やるせなくそれを眺めながら、箱の中から柔かい布で厳重にくるまれている包みを出して、それを丁寧に開きました。
中からは、姫が作ったオレンジの薄切りが乾いたら収めるのにちょうど良い大きさの、ガラスの瓶が現れました。
彼はその、口元に黄色いリボンを結んだ瓶を手に取ると、姫が果物を乾かしている、鏡台の引き出しを開けました。
瓶と、先程作ったオレンジの籠とを収めたあとで、乾きかけているオレンジを一枚、手に取りました。
姫が上手に丸く切れずにハートのように歪になったそのオレンジは、順調に乾いて生のオレンジよりも軽くなり、香りは甘く濃くなっていました。
彼は、それに口づけて、小さく何かを呟きました。
その言葉を一度でも口にすれば、他の誰が聞いて居なくとも、自分の耳には届きます。
そんなことをしたとて益体もなく、言葉自体がもう二度と姫に触れることは叶わないだろう自分の身を、いつまでも焼き続けるであろう事は知っていましたが。
彼はオレンジを元に戻し、また引き出しを閉めました。
簡単に姫の身繕いをして傍らに合ったブランケットを掛けてやると、姫は目を閉じたまま、ふわっとあどけなく微笑みました。
その柔らかい茶色の髪を撫でて、そこに唇を押し当て、すまねぇ、と最後に呟いて。
彼は果物の箱を手に抱え、部屋から去っていきました。
やるせなくそれを眺めながら、箱の中から柔かい布で厳重にくるまれている包みを出して、それを丁寧に開きました。
中からは、姫が作ったオレンジの薄切りが乾いたら収めるのにちょうど良い大きさの、ガラスの瓶が現れました。
彼はその、口元に黄色いリボンを結んだ瓶を手に取ると、姫が果物を乾かしている、鏡台の引き出しを開けました。
瓶と、先程作ったオレンジの籠とを収めたあとで、乾きかけているオレンジを一枚、手に取りました。
姫が上手に丸く切れずにハートのように歪になったそのオレンジは、順調に乾いて生のオレンジよりも軽くなり、香りは甘く濃くなっていました。
彼は、それに口づけて、小さく何かを呟きました。
その言葉を一度でも口にすれば、他の誰が聞いて居なくとも、自分の耳には届きます。
そんなことをしたとて益体もなく、言葉自体がもう二度と姫に触れることは叶わないだろう自分の身を、いつまでも焼き続けるであろう事は知っていましたが。
彼はオレンジを元に戻し、また引き出しを閉めました。
簡単に姫の身繕いをして傍らに合ったブランケットを掛けてやると、姫は目を閉じたまま、ふわっとあどけなく微笑みました。
その柔らかい茶色の髪を撫でて、そこに唇を押し当て、すまねぇ、と最後に呟いて。
彼は果物の箱を手に抱え、部屋から去っていきました。