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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第32章 三度目の、お手合わせ
「っ!」
口づけされそうになった姫は、思わず顔を伏せました。
それを見たタンム卿は、耳の傍でまるで耳を喰むように囁きました。
「…御一人で、そのような残酷なお話をなさりにいらっしゃるとは…勇敢な方ですね」
「ぁ、やっ」
「いや、無謀と言うべきか」
姫は身を捩って首を振り、タンム卿はその首筋に唇を寄せました。
「今日は、手合わせの日ですよ?」
「ふっ…く」
タンム卿は、目元に涙を滲ませている姫の胸元に触れました。
「私は、その積もりで参ったのですが」
胸元に置いた手を柔柔と動かすと、姫は体をいっそう固くして目を閉じ、きゅっと唇を噛んでいます。
「…やれやれ。」
タンム卿はしばらく姫の様子を窺っておりましたが、やがて両手を挙げて、まるで貝のように固く閉じてしまった姫から離れました。
「これでは、どうしようもありません」
「っ…」
その言葉で、姫の目がおずおずと開かれました。
「前にも言いましたが、私は姫に無理をさせたい訳ではないのです」
タンム卿はまだ動けない様子の姫の手を取って、長椅子の上にきちんと座らせてやりました。
「タンム様…ごめんな、さい」
「こういう時に謝られるのは、却って傷付くのですがね」
タンム卿が苦笑すると、姫は先程よりもさらに小さな声で、ごめんなさい、と言いました。
「いえ…きっと、貴女のお召しになったオレンジは、よほど美味しいものだったのでしょう」
タンム卿は独り言のように言って、少しの間、目を閉じました。
「姫。ひとつ、お願いがあります」
座り直して、乱れた服を整えている姫に、タンム卿が告げました。
「…お願い?」
「ハンダマ様に、お目通り願えますか」
「え?」
「この件はもはや私達だけでどうこう出来るものではありません」
「この見合いの仲立ち人のハンダマ様に、直接お話したいことがございます」
口づけされそうになった姫は、思わず顔を伏せました。
それを見たタンム卿は、耳の傍でまるで耳を喰むように囁きました。
「…御一人で、そのような残酷なお話をなさりにいらっしゃるとは…勇敢な方ですね」
「ぁ、やっ」
「いや、無謀と言うべきか」
姫は身を捩って首を振り、タンム卿はその首筋に唇を寄せました。
「今日は、手合わせの日ですよ?」
「ふっ…く」
タンム卿は、目元に涙を滲ませている姫の胸元に触れました。
「私は、その積もりで参ったのですが」
胸元に置いた手を柔柔と動かすと、姫は体をいっそう固くして目を閉じ、きゅっと唇を噛んでいます。
「…やれやれ。」
タンム卿はしばらく姫の様子を窺っておりましたが、やがて両手を挙げて、まるで貝のように固く閉じてしまった姫から離れました。
「これでは、どうしようもありません」
「っ…」
その言葉で、姫の目がおずおずと開かれました。
「前にも言いましたが、私は姫に無理をさせたい訳ではないのです」
タンム卿はまだ動けない様子の姫の手を取って、長椅子の上にきちんと座らせてやりました。
「タンム様…ごめんな、さい」
「こういう時に謝られるのは、却って傷付くのですがね」
タンム卿が苦笑すると、姫は先程よりもさらに小さな声で、ごめんなさい、と言いました。
「いえ…きっと、貴女のお召しになったオレンジは、よほど美味しいものだったのでしょう」
タンム卿は独り言のように言って、少しの間、目を閉じました。
「姫。ひとつ、お願いがあります」
座り直して、乱れた服を整えている姫に、タンム卿が告げました。
「…お願い?」
「ハンダマ様に、お目通り願えますか」
「え?」
「この件はもはや私達だけでどうこう出来るものではありません」
「この見合いの仲立ち人のハンダマ様に、直接お話したいことがございます」