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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第33章 去りゆく人と置き土産
「ハンダマ様。大変申し訳ありませんが、見合いを一旦棚上げとさせて下さい」
「棚上げ?」
ハンダマ王子との会見は、王子の希望によって、スグリ姫の部屋で行われることになりました。
話の内容はお会いしてから、と言われたハンダマ王子は、いよいよ姉の連敗記録も打ち止めか、と先走った考えを持ちました。
そのためハンダマ王子は、スグリ姫の部屋にレンブ姫を伴って現われました。
手合わせの間から一度、自分に割り当てられている客間に戻ったタンム卿は、最後に姫の部屋に現われました。
タンム卿は部屋の入り口でふっと足を止め、何かを探すように部屋の中を見回しました。
ややあってテーブルの上に視線を留めて、うっすら笑うと、促されて席に着きました。
そして、開口一番に放ったのが、「棚上げ」という言葉だったのです。
「ええ。実は急遽、郷に帰らねばならなくなりました」
「まあ…」
思いも寄らぬ申し出に、ハンダマ王子とレンブ姫は表情を固くしています。
「スグリ姫の事は、たいへん好ましい方だと思っております。ですが、婚約から婚姻へと進む決め手まで、この度は至ることができませんでした」
タンム卿はそこで言葉を切って、スグリ姫の方を見ました。
姫が俯き加減の上目遣いでそちらを見ると、タンム卿は姫に、ご安心なさい、と言うように微笑みかけました。
「今の私には、姫とじっくり御手合わせする時間が無い。それなのに、姫のことをこれ以上お約束で縛るのは、私の望む所ではありません」
そこでバンシルが、一同の前にお茶を置きました。
タンム卿はバンシルに有難う、と言うと、一度だけカップに口を付けて、続けました。
「なので、一旦この話は、棚上げとさせて頂きたいのです。その間にもし姫に良い御話や御縁が有れば、私との御話は無かった事として、忘れてください。
ですが、もし私が再びこの地を訪れることが出来るようになった際に姫が未だ御独り身であれば、私は喜んで姫との御見合いを、もう一度申し込みましょう」
「棚上げ?」
ハンダマ王子との会見は、王子の希望によって、スグリ姫の部屋で行われることになりました。
話の内容はお会いしてから、と言われたハンダマ王子は、いよいよ姉の連敗記録も打ち止めか、と先走った考えを持ちました。
そのためハンダマ王子は、スグリ姫の部屋にレンブ姫を伴って現われました。
手合わせの間から一度、自分に割り当てられている客間に戻ったタンム卿は、最後に姫の部屋に現われました。
タンム卿は部屋の入り口でふっと足を止め、何かを探すように部屋の中を見回しました。
ややあってテーブルの上に視線を留めて、うっすら笑うと、促されて席に着きました。
そして、開口一番に放ったのが、「棚上げ」という言葉だったのです。
「ええ。実は急遽、郷に帰らねばならなくなりました」
「まあ…」
思いも寄らぬ申し出に、ハンダマ王子とレンブ姫は表情を固くしています。
「スグリ姫の事は、たいへん好ましい方だと思っております。ですが、婚約から婚姻へと進む決め手まで、この度は至ることができませんでした」
タンム卿はそこで言葉を切って、スグリ姫の方を見ました。
姫が俯き加減の上目遣いでそちらを見ると、タンム卿は姫に、ご安心なさい、と言うように微笑みかけました。
「今の私には、姫とじっくり御手合わせする時間が無い。それなのに、姫のことをこれ以上お約束で縛るのは、私の望む所ではありません」
そこでバンシルが、一同の前にお茶を置きました。
タンム卿はバンシルに有難う、と言うと、一度だけカップに口を付けて、続けました。
「なので、一旦この話は、棚上げとさせて頂きたいのです。その間にもし姫に良い御話や御縁が有れば、私との御話は無かった事として、忘れてください。
ですが、もし私が再びこの地を訪れることが出来るようになった際に姫が未だ御独り身であれば、私は喜んで姫との御見合いを、もう一度申し込みましょう」