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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第34章 目利きの落着
「あ…」
サクナのきっぱりとした断りを聞いて、姫は肩を落として、俯きました。

(そうなんだ…私の独り合点だったんだ…サクナもちょっとは、同じように思ってくれてるんじゃないかって)
考えたらまた涙がこぼれそうになって、ぎゅっと目を瞑りました。

(私だけ…私だけが、こんなに、すk「…え!?」
自分の行動の結果で落ち込みのどん底に突き落とされていた姫の体が、突然、仄かにオレンジの匂いのする温かいものに、むぎゅっと包まれました。

「え、え、え?なにっ、」

「試す?そんなもん無しだ、無し。お試しもお手合わせも要らねぇ。無駄だ、無駄」
目を開けて見ると、何故か無駄無駄言いながら、サクナが姫を抱き締めているようです。

「むだって!ひどっ」
人が勇気を振り絞ったのに、と姫が抗議すると、サクナは抱いていた腕を緩めて姫の顔を見ながら、不機嫌そうに言いました。
「そりゃ、無駄だろ?笑おうが蹴られようが泣き叫ばれようがどうなろうがお前を選ぶんじゃ、試す意味なんか無ぇ」
「…へ?」
姫が、お前を選ぶ?お前?誰?と呟くと、サクナは嫌そうに眉をひそめて、姫のおでこを指先で突つきました。
「…お前はお前に決まってんだろ。お・ま・え・だ、
スグリ姫。」
あいつも手を引いたようだしな、と言うと、サクナは姫の髪に、口づけを落としました。

「でもっ。蹴るだけじゃなく、殴るとか、頭突きもするかも」
「あーあー、いくらでも、好きなだけやれ」
髪の次は、額に。

「…嫌にならない?」
「は?なるかよ、」
次は、瞼に。

「あいつに聞いたんだろ?俺の目利きは外れねぇ、」
次は、頬に。
そして最後に、

「お前は俺が見つけた中で、世界で一番美味い果物だ。」

サクナはそう言って、姫の唇に、口づけました。
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