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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第37章 解かれた呪い
「彼は、其方の婚約者であった、タンム卿の従者なのだろう?」
王は頭を下げたままのサクナを一瞥して言いました。
「タンム卿とは昨日で婚約を一旦解消したと、ハンダマから聞いている。それなのに今日彼が婚約者としてここに現れたと言うことは、主の婚約者を寝取ったと思われても仕方がない」
「お父様っ!?ひどすぎます!!」
スグリ姫は今までの人生で一度も出したことの無い、怒りと悲しみの混ざった、血の出るような叫びを上げました。
「第一、嫁に出すには遠方過ぎる。タンム卿のように他に兄弟が居て家業を継がなくても良く、土地を離れて差し支えの無い仕事を持ち、格が釣り合う相手ならまだしも、」
王が言い募る言葉が矢のように刺さる気がして、スグリ姫は顔を伏せました。
床に敷かれている絨毯の模様が、ゆらりと歪んで見え始めます。
父たる王の失礼極まりない言葉を今すぐ謝りたい気持ちで一杯でしたが、涙が零れ落ちそうで、サクナの方に目をやることすら出来ません。
(泣かない、)
(泣かないもんっ…何があっても、私は、)
「いい加減に、なさいませ。」
突然。
凛とした声が王の言葉を遮って、謁見の間の張り詰めた空気を、震わせました。
王は頭を下げたままのサクナを一瞥して言いました。
「タンム卿とは昨日で婚約を一旦解消したと、ハンダマから聞いている。それなのに今日彼が婚約者としてここに現れたと言うことは、主の婚約者を寝取ったと思われても仕方がない」
「お父様っ!?ひどすぎます!!」
スグリ姫は今までの人生で一度も出したことの無い、怒りと悲しみの混ざった、血の出るような叫びを上げました。
「第一、嫁に出すには遠方過ぎる。タンム卿のように他に兄弟が居て家業を継がなくても良く、土地を離れて差し支えの無い仕事を持ち、格が釣り合う相手ならまだしも、」
王が言い募る言葉が矢のように刺さる気がして、スグリ姫は顔を伏せました。
床に敷かれている絨毯の模様が、ゆらりと歪んで見え始めます。
父たる王の失礼極まりない言葉を今すぐ謝りたい気持ちで一杯でしたが、涙が零れ落ちそうで、サクナの方に目をやることすら出来ません。
(泣かない、)
(泣かないもんっ…何があっても、私は、)
「いい加減に、なさいませ。」
突然。
凛とした声が王の言葉を遮って、謁見の間の張り詰めた空気を、震わせました。