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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第37章 解かれた呪い
「…ねえ、貴方?」
その声は小鳥のさえずりの様に心地よく、けれど、銀の針のように、冷たく鋭い響きを帯びておりました。
「娘を泣かせて、楽しいですか?」
スグリ姫は顔を上げて声の主を見て、驚きで目を見開きました。
「おかあさま…お声、」
スグリ姫の呟きに王妃は微笑み、若い二人の方に向き直りました。
「初めまして、サクナ。スグリも、声では、初めましてだわね?」
軽やかな歌うような声が、今度は慈愛に満ちて響きます。
「この子の母の、ツグミです。まあ、その名を呼ぶ人は、今ではもうこの困ったお父様くらいなのだけれど。」
そう言うと王妃は、王の方をじろっと睨みました。
「わざわざ呼び立てた上に嫌な思いをさせて、ごめんなさいね、スグリ、サクナ。確かめたいことと、伝えたいことがあって」
王妃は椅子から立ち上がり、スグリ姫の傍らにやって来ました。
そして手袋をはずして手を伸ばし、娘の頬を両手で包んで、にっこりしました。
「こうするの、子供の頃以来ね」
「お母様…」
王妃を見上げる姫の瞳から、涙が一粒零れました。
母たる王妃は懐から柔らかな手巾を取り出して、娘のスグリ姫の頬の涙を優しく抑えました。
そして、「やっぱりね」と囁いて、微笑みました。
「スグリ?」
「はい、お母様」
王妃は、スグリ姫と傍らに控えたサクナを順番に眺めて、悪戯っぽく微笑みました。
「貴女、『特異体質』、治ったでしょ?」
その声は小鳥のさえずりの様に心地よく、けれど、銀の針のように、冷たく鋭い響きを帯びておりました。
「娘を泣かせて、楽しいですか?」
スグリ姫は顔を上げて声の主を見て、驚きで目を見開きました。
「おかあさま…お声、」
スグリ姫の呟きに王妃は微笑み、若い二人の方に向き直りました。
「初めまして、サクナ。スグリも、声では、初めましてだわね?」
軽やかな歌うような声が、今度は慈愛に満ちて響きます。
「この子の母の、ツグミです。まあ、その名を呼ぶ人は、今ではもうこの困ったお父様くらいなのだけれど。」
そう言うと王妃は、王の方をじろっと睨みました。
「わざわざ呼び立てた上に嫌な思いをさせて、ごめんなさいね、スグリ、サクナ。確かめたいことと、伝えたいことがあって」
王妃は椅子から立ち上がり、スグリ姫の傍らにやって来ました。
そして手袋をはずして手を伸ばし、娘の頬を両手で包んで、にっこりしました。
「こうするの、子供の頃以来ね」
「お母様…」
王妃を見上げる姫の瞳から、涙が一粒零れました。
母たる王妃は懐から柔らかな手巾を取り出して、娘のスグリ姫の頬の涙を優しく抑えました。
そして、「やっぱりね」と囁いて、微笑みました。
「スグリ?」
「はい、お母様」
王妃は、スグリ姫と傍らに控えたサクナを順番に眺めて、悪戯っぽく微笑みました。
「貴女、『特異体質』、治ったでしょ?」