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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第37章 解かれた呪い
「お母様?!なんでそんなことっ、」
スグリ姫の、母の両手で挟まれている頬は、かあっと熱を持ちました。

「そうじゃないかと思っていたわ、私の声が戻ったから」
「声?」
「昔話をしても良いかしら?あなたたちにも関わる話よ」

いい?と言うと、二人が頷くのを待って、ツグミ王妃は話し始めました。



「スグリ。貴女が生まれたときに、厄介な呪いが国にかけられそうになったのよ。国に呪いがかけられれば民にその累が及び、私たちの命も、産まれたばかりの貴女の命も、脅かされるところだった。でも、ひとつだけ、呪いを避ける方法があった」

王妃は、スグリ姫とサクナが話についてこられるように、そこでしばらく話を切りました。

「呪いを避ける代償は、貴女の『特異体質』。そして、私の声と、魔女としての力」
「え、お母様、魔女だったの!?それに、特異体質、って…特異体質は、特異体質じゃなくて、呪いだったの!?」

「ええ。私の声と魔女の力は最初の時に失くしたけれど、貴女の呪いは十六になるまで、どんなものだか分からなかった。呪いが効力を持ったと分かったときに、私とお父様、それに呪いの事を知っていた副大臣ーー今の副大臣ではなくて、貴女も小さい頃から可愛がって貰ってる、大臣の小父様よーーその三人は、それが呪いだと広まるよりは、特異体質と言うことにしておくことを選んだの」
「…そう、だったんだ…」
「でも、昨日、私の呪いが消えました。すぐに、貴女の身に何かあったのかしらと思ったわ。バンシルが何か知っていそうだったからこっそり呼んで、貴女と婚約者殿を、今日ここに呼んでくれるように、お願いしたの」
王妃はにっこり微笑むと、内緒話をするように、声を潜める振りをしました。

「そうそう。私の呪いが解けたこと、お父様と大臣とあなたたちと、バンシルにしか知らせてないから。他の人には、内緒。しばらくは、今まで通りで通すつもりよ。だって、何かと面倒ですもの…ね?」

(お母様、もう魔女の力は無いって、仰ってるけど…十分、魔女に見えます…!)
スグリ姫には、にっこりと笑う王妃の表情が、今までとは少し違って見えました。
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