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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第8章 王とその友
副大臣が大臣を訪れてから、数刻の後。
秋の日は暮れかけて、夕焼けから夜の闇に、刻々と代わってゆく頃。
王と后、生まれたばかりの赤子が寝んでいる城の一室を、副大臣が訪れました。

「ご出産、おめでとうございます」

「ありがとう、副大臣」
出産と言う大仕事を終え母となった后は、疲労の色は濃いものの、輝くような喜びに満ちていました。

「子も見てやってくれないか。なんと、こんなに小さいのに、ちゃんと爪まであるのだぞ!」
すっかり母の顔をして落ち着いている后に比べて、王の方は。
出産前のそわそわが早くも全て親バカに変換されたかのような、大変な舞い上がりっぷりでした。

(今、この書状を見せなくても、良いのではないか?せめて、明日の朝に・・・)

今目の前に居る夫婦と赤子の家族は、間違いなく世界一幸せな時間を過ごしています。
この書状は、それを壊してしまうかもしれません。
副大臣は手にした書状を見て、今夜はこのまま暇乞いをしよう、と思い直しました。

(この書状の名宛て人が誰か分かるまで、既に何日もかかっている。一日ぐらい増えても、構わないだろう)

そう決めて、副大臣は王と后にもう一度祝いの言葉を述べ、また明日様子を見に来ると言い置いて、部屋を辞去しました。

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