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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第8章 王とその友
部屋に居た間に、外の闇は濃くなり、廊下は薄暗くなってきていました。
明日登城したらまず王に話をして、と考えていると、突然後ろから肩を叩かれました。
「おい、お前、何を企んでる?」
驚いて振り向くと、王がにやにやしながら立っていました。
「・・・何のことですか」
「長い付き合いの俺を誤魔化せると思うか」
王は、幼い頃からの友と二人のときだけの気安い口調で言いました。
「お前、何か企んでると、目玉がうろうろするって知らないだろう」
「目玉がうろうろって、」
副大臣は、友の奇妙な言い方に、思わず吹き出しました。
副大臣の父親は、王の最も信頼する臣下のうちの一人でした。
そのため、王と副大臣は物心つく前から、兄弟のように親しく育ってきました。
よちよち歩きの頃も、泥まみれになって遊んだ頃も、学び舎で学んだ頃も、青年時代になっても、王が即位して、主君と臣下の関係になっても。
副大臣は常に、王の傍らに居たのです。
その王に、ここまで言われては、隠しようもありません。
(仕方ない・・・このお方に隠し事など、出来るわけが無かった)
お調子者なのに妙に鋭いところのある王に、敵うわけなど無かったのです。
「では、ひとつ、お話があります」
隠し事を諦めた副大臣は、王の目をまっすぐに見て、持っていた書状を差し出しました。