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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第37章 解かれた呪い

「お前は俺にとって、最高の果樹園の一番高い木の日当たりの良い天辺に実った、極上の樹成りのリンゴみてぇな物だった。手が届くなんて、思える訳無ぇ。だけどお前は、俺を選んで落ちてきた」

サクナは姫を見ながらそう言って、彼が姫に渡したオレンジのように、にっこり暖かく笑いました。

「選んだだけの価値があったと一生ずっと思えるような、そんな毎日を送りてぇと思っています。二人で、一緒に。」

そう言うとサクナは姫の近くに寄って、並んで頭を下げました。
「王様。婚約と、ゆくゆくは婚姻することを、お許しください。姫は反対されても構わないと言ってくれたが、私は姫に一点の傷もつけたく無い。王妃様が許してくださっても王様に反対されてたんじゃ、お許しは半分だ。姫の気持ちは、どこか満たされないままでしょう。そんな思いは、させたく無ぇ。」

サクナは顔を上げて、王の方を見ました。
「今、お許しいただけなくても、いつまでも待ちます。…スグリ姫が、待っていてくれる限り。」
「お父様。サクナが待つと言うなら、私も、何十年でも待ちます。私たちの方がお父様より寿命は長いでしょうから、よぼよぼになってから後悔したって、知りませんことよ」

しんと静まり返って王の返答を待っている部屋に、くすくす笑いが聞こえてきました。
「この辺が折れどころですわよ、貴方。」
「ツグミ…」
娘の成長と、その婚約者の情熱に打ちのめされた王は、笑っている王妃を見て、情けない顔になりました。

「いつまでも意地を張ってると、孫が抱けなくなりますよ。ねぇ?」
「「!!!」」
王妃に言われて、若い二人は固まりました。
(絶対、なんかバレてる…っ!やっぱり、お母様って、魔女…っ!!)
スグリ姫が背中に流れる冷や汗を感じていると、王が大きな溜息を吐くのが聞こえました。

「…分かった。認めよう。サクナ、失礼なことを言って、すまなかった。心から詫びる」

「ほんと!?ありがとう、お父様!!」
「王様、ありがとうございます!」

二人が見詰め合って喜びを噛み締めていると、王がぼそっと言いました。

「…その代わり、孫は早目に抱かせてくれよ。」

そのぼやきを耳にして、ツグミ王妃はくすくす笑い、王と王妃に晴れて認められた婚約者殿とスグリ姫は、二人で真っ赤になったのでした。
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