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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第38章 100人目とのお手合わせ
謁見の間から下がった二人は、部屋に戻る前に控えの間で、少々時間を取りました。
「部屋まで手を繋いで帰ってもいいかどうか」で、しばらく口論になったのです。


「手くらい繋いだっていいじゃない」
謁見の間の扉が閉まった途端婚約者に飛びつき、ぎゅうぎゅう抱きついて頭を擦り付ける、という行動を終えて落ち着いたスグリ姫は、不満そうに言いました。

「公式に発表になるまでは、人目を気にしたほうがいいだろ」
頭を擦り付けてくる姫の髪に頬擦りと口づけを繰り返し、擦り付け終わった姫の唇をしばらく堪能したサクナは、そう答えました。

「えー!でも、せっかくお許しが出たのに」
姫は唇を尖らせました。
尖らせついでに目の前にあるシャツから覗く胸元に口づけて、何度かちゅっと啄みました。

「いや、それは、心証が良く無え。無駄に後ろ指差されることになるぞ」
サクナは姫に協力してやろうと、自分のシャツのボタンをいくつか外しました。
その後は手持ち無沙汰だったので、姫の特異体質が本当に治ったかーー呪いがちゃんと解けたかどうかを、いろいろ確認することにしました。
念には念を入れておくのに、越したことはありません。

「そんな、心証とか、っ…お父様みたいなっ、ことっ!?いっ…て、」
「いやいや、あれが世間の普通の見方だぞ?王様の仰ることはもっともだ。当たり前すぎて怒る気にもなれねぇ」
「…そっ…なっ、の?」
「そりゃそうだろ。タンムが帰ったのは昨夜だ。まだ一日も経って無ぇのに、別の男と居るってのはなぁ…しかもこんなことまでヤっちまってちゃ、心証良い筈無ぇだろ?」
「うっ、んんっ、」
「せめて王様と王妃様からハンダマ様に伝わるまでは、大人しくしとく方が良い。できれば部屋に別々に帰った方が良いくらいだ…ん?どうした、スグリ」
「ど、したじゃない…っ」
姫の上着の前のボタンは全部外されて、真っ赤な顔でぺたんとサクナにもたれています。
「お。話し合いに結構時間食ったな、そろそろ行くか。ボタン閉めるぞ、俺のもお前のも」

「ばかっ!やりたい放題やっといて、何が『人目を気にした方がいい』よっ!」

結局一緒に帰るが手は繋がないという折衷案を採用し、部屋に戻ることになりました。
「分かってねえな。誰も居ない場所と、誰が通るか分からねぇ場所は、違うんだよ」
お前だってさっき俺に悪戯しただろ、とサクナは嘯いています。
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