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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第40章 Happily ever after
声がした方を見ると、ハンダマ王子が強張った表情で立っておりました。
スグリ姫は心の中で「ハンダマ、助けろ!」と叫びましたが、弟が許婚に関しては大変心の狭い男であったことを思い出しました。
「姉様?」
「な、なにかしらっ?…え?」
裏の決闘場に行こうか、と言われるのを予想して弟の方を見たスグリ姫に、ハンダマ王子がなにかをすっと差し出しました。

「なにこれ。」
「…姉様。何も言わずに、受け取って欲しい」
「何も言わずにって、なあに?…わぁ!」
ハンダマ王子が渡してきた包みを開けると、中から大き目の美しいカードが出てきました。
飾り文字でサクナとスグリ姫の名が書かれ、果物の柄があしらわれています。

「うわー…きれーい…」
スグリ姫は素直に賞賛しました。
弟がこれを作った経緯はともかく、それは確かに、見たこともないほどに大変美しいものであったからです。

「ハンダマ様。これは間違いなく、最高傑作でございますね」
賢明なバンシルは、「間違いなく」と「最高傑作」の間の、「例の99以上に」という部分を省略して賛辞を送りました。

「姉様。どうか、今迄の非礼を、水に流してはもらえませんか。物で釣って許しを請うわけではありませんが、私にはこのようなものでしか心を示すことはできない。お二人への祝福の印として、是非ともお収め頂きたい」

「ハンダマ様…」
きっぱりと凛々しく頭を下げる許婚を見て、レンブ姫の目のハートはスグリ姫からハンダマ王子へと移りました。

「レンブ、どうか許してはいただけないだろうか。私が全て間違っていた。決して姉様とサクナ様を祝福しない訳ではないのだと、これで分かって頂けないだろうか」
そうです。
そもそもハンダマ王子が気を悪くしたのは、姉と婚約者殿に異議があったからではなく、レンブ姫が「二人の殿方に争われるなんて情熱的!」と言ったのが原因だったのです。ハンダマはサクナに対してぎこちない態度を見せては居りましたが、最初の謁見の時の父王のように、特別失礼なことをしたという訳ではないのです。
ハンダマ王子がレンブ姫に、自分の狭量な嫉妬心をきちんと説明しておけばこんなことにはならなかったのですが、王子には王子なりのプライドがあったのでしょう。

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