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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第14章 侍女バンシルの回想
「お帰り、バンシル」
家に着くと、父親や兄たちは仕事に行った後でしたが、母親が優しく迎えてくれました。
「夕方には父さんや兄さんたちも帰るから、みんなで夕飯を食べようね。明日馬車が迎えに来てくれるそうだから、ゆっくりして行ったらいい」
バンシルの荷物の中に入っていたお土産のお茶を淹れながら、母親は久しぶりに会う娘に、にこにこと笑いかけました。
「ありがとう、母さん。・・・聞きたいことが、あるのだけど。」
バンシルの母親のベラは、姫の乳母でもありました。
その、姫の乳母でもある母に、バンシルは今日は姫のお見合いだったことを話し、一緒に居ると言う約束を守れなかったことを話しました。
「そうだったのかい。それは、仕方ないねえ」
バンシルは、妙に納得したような母の態度に、驚きました。
約束を破ることに厳しい母が、なぜ怒らないのか、不思議だったからです。
そう問いかければ、母は困ったように笑って、こう言いました。
「バンシルや。姫様は、この国の王家の者としての人生を背負っているのだよ。子どものうちは好きなように過ごせても、大人になってゆくこれからは、そうはいかないのだよ」
そう語っている母は、なぜかとても淋しそうに見えました。
「もしお前がこれからも姫様のお傍近くにお仕えするつもりならば、今までとは違った仕え方をしなくてはいけないかもしれないね。お前は賢い、聡い子だから、心配はしていないけれどもね」
それが苦しくなったら、いつでも帰って来たらいい。と、付け加えて、母はテーブルの上に乗っているバンシルの手を撫でました。
そして、お茶を飲み干すと、椅子から立ち上がって言いました。
「さあ、お茶道具を片付けて、夕飯の支度をしようかね。手伝っておくれ、バンシル」
家に着くと、父親や兄たちは仕事に行った後でしたが、母親が優しく迎えてくれました。
「夕方には父さんや兄さんたちも帰るから、みんなで夕飯を食べようね。明日馬車が迎えに来てくれるそうだから、ゆっくりして行ったらいい」
バンシルの荷物の中に入っていたお土産のお茶を淹れながら、母親は久しぶりに会う娘に、にこにこと笑いかけました。
「ありがとう、母さん。・・・聞きたいことが、あるのだけど。」
バンシルの母親のベラは、姫の乳母でもありました。
その、姫の乳母でもある母に、バンシルは今日は姫のお見合いだったことを話し、一緒に居ると言う約束を守れなかったことを話しました。
「そうだったのかい。それは、仕方ないねえ」
バンシルは、妙に納得したような母の態度に、驚きました。
約束を破ることに厳しい母が、なぜ怒らないのか、不思議だったからです。
そう問いかければ、母は困ったように笑って、こう言いました。
「バンシルや。姫様は、この国の王家の者としての人生を背負っているのだよ。子どものうちは好きなように過ごせても、大人になってゆくこれからは、そうはいかないのだよ」
そう語っている母は、なぜかとても淋しそうに見えました。
「もしお前がこれからも姫様のお傍近くにお仕えするつもりならば、今までとは違った仕え方をしなくてはいけないかもしれないね。お前は賢い、聡い子だから、心配はしていないけれどもね」
それが苦しくなったら、いつでも帰って来たらいい。と、付け加えて、母はテーブルの上に乗っているバンシルの手を撫でました。
そして、お茶を飲み干すと、椅子から立ち上がって言いました。
「さあ、お茶道具を片付けて、夕飯の支度をしようかね。手伝っておくれ、バンシル」