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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第18章 「果物王国」
「果物王国」発言のあと、スグリ姫ははっと我に返りました。
スミマセンと呟くと真っ赤になって、縮こまって椅子に座りました。

そんな姫を見て、ハンダマは頭を抱え、バンシルは思わず心の外で舌打ちし、サクナは相変わらず、眉をひそめていましたが。

「あははっ!そうです、姫!よくご存知ですね!」
事態が飲み込めたタンム卿は、破顔一笑しました。

「その通りです、姫。我が領地はまさに、『果物王国』なのです・・・なあ、サクナ」
従者に向かってそう言うと、サクナも無言で頷きました。

「サクナは私の従者でもありますが、家業は果物を作っているのですよ」
「えーっ!!果物を!?」
スグリ姫は、陽気に話すタンム卿に比べて機嫌の悪そうなサクナにびくびくしていましたが、果物農園の園主だと聞くと、途端に目を輝かせました。
「素敵です、サクナ様!今は、どんな果物が成っているのですか?」

「・・・桃とか、スイカとか」
興奮気味に詰め寄られて、サクナは腰が引け気味に答えました。

「わあ、桃!・・・桃と、『スイカ』?」
姫は耳慣れない名前に首を傾げました。

「スイカはご存じないですか?実はお土産にと思って持参して、後でお渡ししようと、下で預かって頂いているのです。サクナ、取ってきてくれないか」

「はいはいはーい!私も取りに行きたいですっ、『スイカ』!!!」

従者であるサクナにお使いを頼むタンム卿に向かって、朗らかな声が響きました。
果物王国に大興奮の、言わずと知れたスグリ姫です。

「姉様・・・今、お見合い・・・」
お見合いの席で相手を放っておいてお土産を取りに行く姫が、どこの世界に居るでしょう。
ハンダマ王子は頭を抱えました。
その後ろでは侍女のバンシルが、姫に冷たい視線を送っています。

「えー!だって、一秒でも早く見たいんだもん、『スイカ』!!」
本当は「一秒でも早く食べたい」なのではと、バンシルは心の中で突っ込みました。

「いえ、構いませんよ。ふるさとに興味を持ってもらえるのは、嬉しいものです」
我が故郷はそのうち、姫のふるさとにもなるかもしれませんしね。
そんなタンム卿の言葉に、ハンダマ王子は感激し、侍女バンシルはこの人どこまでお人よしなんだと半分呆れ、従者サクナは相変わらず眉をひそめてお茶を飲み。

当のスグリ姫はと言えば、せっかくの良い台詞を、全く聞いていませんでした。
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