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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第19章 スグリ姫の実力
「えー!あれなの?あれなの!!見たい見たい!サクナお願い、早く~!」
お見合い相手の従者だというのに、もはや名前も呼び捨て。
一目散に木箱に走り寄っています。

「はいはい、只今・・・釘抜き、ありますか」
サクナはスグリ姫の声に眉をひそめながらも、近くに居た下働きの男に聞きました。

「おう、あるぜ!姫様、この御方に道具箱貸してやってもいいよな?」
「いいよー!何でも使ってー!」
姫は木箱に寄り添って、なでたりコンコンと叩いたりしています。

「・・・道具箱?」
姫と男の会話を聞いて、サクナの眉がいっそうひそめられました。
「ほらよ、姫様の道具箱だ」
釘抜きも入ってる筈だよ、と渡されて、サクナは男に聞きました。

「おうよ!姫様は可愛い顔に似合わず、木工がお好きでなあ!」
「そうそう。ここにある棚や椅子なんかも、いくつかは姫様の作なんだよ」
横から恰幅の良い女が口を挟みます。
「釘抜きだったら姫様にやらせてやんな、喜ぶから」

木工に、道具箱に、釘抜き。
ただただ漂う、違和感。
「姫」という言葉と、これほどそぐわないものが、有るでしょうか。

サクナは姫に釘抜きを渡すべきかどうか悩みながら、木箱の方に振り向・・・

・・・いて、スグリ姫が目に入ったサクナは。
心底ぎょっとして、飛び上がりました。
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