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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第21章 姫の弟子入り
「分かった。教えてやる」
「え、ほんと?!やったー、ありがとう師匠!!」
「あ、こら、スイカを離すな!」
諸手を挙げて喜びを表現しようとした姫は、サクナの言葉にスイカを抱えなおしました。
「はー、危ない危ない」
「危ねぇのは、お前だ!」
そうでした!と舌を出しながらもほとんど反省の色が無い姫を見て、サクナは溜息を吐きました。
「ただし、条件がある」
「了解です、師匠!」
内容を聞かずに了解するな、と眉をひそめたサクナから姫に告げられた条件は、次のようなものでした。
一つ目。教わることは、誰にも口外しないこと(特にタンム卿には絶対)。
二つ目。誰にも分からないように、姫の部屋でこっそり行うこと(果物は姫のおやつとして運ばせる)。
三つ目。弟子として教わるときは、弟子としてサクナの言うことを聞くこと。
「…以上だ」
「え、それだけ?教えてもらうのに支払うものとかの条件は?」
「別に要らねぇ」
「そんなー、タダで教わるなんて、なんかひどいワガママ姫みたいじゃない」
姫は膨れました。
教えるのを断っているのに食い下がったり、いらないと言われたものに引き下がらずに逆切れしている時点で十分我侭なことには、全く気付いていないようです。
「分かりました、師匠。じゃあ今のところはそれで、そのうちなんか思いついたら、いつでも言ってください、師匠!」
「その『師匠』は止めろ」
「へ?」
「師匠は敬称だ。いくら弟子でもお前に言われるのは落ち着かねぇ」
「そうなんだー。じゃあなんて?サクナ様?」
姫はスイカを抱えたまま、小首を傾げました。
「それも止めろ。教えるときは、マイスターと呼べ」
「まいすたー?」
「俺達の街での果物細工の職能の親方の等級だ」
普通に親方と呼ばせても良いのですが、姫に「親方!」と呼ばせては…ますます、姫らしさから遠ざかる方向に加速する恐れがあります。
(へー。土地によって色々な習慣の違いがあるんだなあ。まいすたーまいすたー…)
スグリ姫にとっては、聴きなれない呼び名です。
口に出す前に、頭の中で何度か練習しました。
「よし。了解です、マイスター!…あ。」
ちょうど最上階にたどり着き、長い廊下の向こうに姫の部屋が見えてきた時。
姫が何かを思い出したように、立ち止まりました。
「え、ほんと?!やったー、ありがとう師匠!!」
「あ、こら、スイカを離すな!」
諸手を挙げて喜びを表現しようとした姫は、サクナの言葉にスイカを抱えなおしました。
「はー、危ない危ない」
「危ねぇのは、お前だ!」
そうでした!と舌を出しながらもほとんど反省の色が無い姫を見て、サクナは溜息を吐きました。
「ただし、条件がある」
「了解です、師匠!」
内容を聞かずに了解するな、と眉をひそめたサクナから姫に告げられた条件は、次のようなものでした。
一つ目。教わることは、誰にも口外しないこと(特にタンム卿には絶対)。
二つ目。誰にも分からないように、姫の部屋でこっそり行うこと(果物は姫のおやつとして運ばせる)。
三つ目。弟子として教わるときは、弟子としてサクナの言うことを聞くこと。
「…以上だ」
「え、それだけ?教えてもらうのに支払うものとかの条件は?」
「別に要らねぇ」
「そんなー、タダで教わるなんて、なんかひどいワガママ姫みたいじゃない」
姫は膨れました。
教えるのを断っているのに食い下がったり、いらないと言われたものに引き下がらずに逆切れしている時点で十分我侭なことには、全く気付いていないようです。
「分かりました、師匠。じゃあ今のところはそれで、そのうちなんか思いついたら、いつでも言ってください、師匠!」
「その『師匠』は止めろ」
「へ?」
「師匠は敬称だ。いくら弟子でもお前に言われるのは落ち着かねぇ」
「そうなんだー。じゃあなんて?サクナ様?」
姫はスイカを抱えたまま、小首を傾げました。
「それも止めろ。教えるときは、マイスターと呼べ」
「まいすたー?」
「俺達の街での果物細工の職能の親方の等級だ」
普通に親方と呼ばせても良いのですが、姫に「親方!」と呼ばせては…ますます、姫らしさから遠ざかる方向に加速する恐れがあります。
(へー。土地によって色々な習慣の違いがあるんだなあ。まいすたーまいすたー…)
スグリ姫にとっては、聴きなれない呼び名です。
口に出す前に、頭の中で何度か練習しました。
「よし。了解です、マイスター!…あ。」
ちょうど最上階にたどり着き、長い廊下の向こうに姫の部屋が見えてきた時。
姫が何かを思い出したように、立ち止まりました。