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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第23章 はじめての果物細工講習
「姫様。そろそろ枕と別れてください」
「ぅ~~~」
タンム卿との最初の顔合わせの翌日。
スグリ姫は寝起きにぐだぐだと枕と戯れて、バンシルに呆れられておりました。
「バンシルぅ~、穴があったら入りたいよ~」
「聞き飽きました。昨日から何回言ってるんです、それ」
姫はお気に入りの枕に顔をうずめながら、昨日のことを思い出しました。
顎を蹴られたにもかかわらず、タンム卿の態度は変わりませんでした。
「っふふ、ごっ…ふふっ…めんっ、なさぃ…」
大変なことをしてしまったのに、笑いが止められない姫に気を悪くすることも無く、床にひざまずいたタンム卿は、姫の手を取っておっしゃいました。
「姫、安心していていいのですよ。私はこのようなことくらいで、あなたを嫌ったりはしません。幸い、舌も噛んでいませんし、ちょっと打っただけです。それよりも、私を信じて秘密を打ち明けて下さったことを、とても嬉しく思いますよ」
そして、さあ部屋に戻りましょう、と部屋まで送ってくださって、また晩餐のときにお目にかかります、と客間に戻って行かれました。
晩餐の時にお会いしたタンム卿の顎は、内出血を起こし、食事もしづらそうで、姫の罪悪感は、再び刺激されたのですが。
「…タンム様って、本当に誠実な方なんだわねー…」
姫の特異体質を聞いて、タンム卿と同じように「気にしない」と言ってくれた殿方は、今までも何人もおりました。
しかし、そのあと、タンム卿のような事前確認や「お手合わせ」で姫の特異体質が尋常ではないことを知ると、その時点でお断りになる殿方が、大半だったのです。
ましてや、蹴っ飛ばしたのに許してくださった殿方は、今までいらっしゃいませんでした(※特殊な趣味の方を除く)。
「誠実っていうか、お人よしなんじゃないでしょうか」
感慨にふける姫の着替えを用意しながら、バンシルが言い放ちました。
「でも、不幸中の幸いでしたね。タンム様が確認なさった足が靴下に大穴の開いた方だったら、穴があったら入りたいどころか即破談でしたよ、は・だ・ん。」
「…バンシル、ひどい…」
そう言いながらも、姫は自分の「姫らしくない」振る舞いに打ちのめされて、また枕にのめりこみました。
「これを機会に、穴の開いた靴下をみみっちく履くのはやめることですね。さあ、そろそろほんとに起きないと、あの無礼な従者が来てしまいますよ」
「ぅ~~~」
タンム卿との最初の顔合わせの翌日。
スグリ姫は寝起きにぐだぐだと枕と戯れて、バンシルに呆れられておりました。
「バンシルぅ~、穴があったら入りたいよ~」
「聞き飽きました。昨日から何回言ってるんです、それ」
姫はお気に入りの枕に顔をうずめながら、昨日のことを思い出しました。
顎を蹴られたにもかかわらず、タンム卿の態度は変わりませんでした。
「っふふ、ごっ…ふふっ…めんっ、なさぃ…」
大変なことをしてしまったのに、笑いが止められない姫に気を悪くすることも無く、床にひざまずいたタンム卿は、姫の手を取っておっしゃいました。
「姫、安心していていいのですよ。私はこのようなことくらいで、あなたを嫌ったりはしません。幸い、舌も噛んでいませんし、ちょっと打っただけです。それよりも、私を信じて秘密を打ち明けて下さったことを、とても嬉しく思いますよ」
そして、さあ部屋に戻りましょう、と部屋まで送ってくださって、また晩餐のときにお目にかかります、と客間に戻って行かれました。
晩餐の時にお会いしたタンム卿の顎は、内出血を起こし、食事もしづらそうで、姫の罪悪感は、再び刺激されたのですが。
「…タンム様って、本当に誠実な方なんだわねー…」
姫の特異体質を聞いて、タンム卿と同じように「気にしない」と言ってくれた殿方は、今までも何人もおりました。
しかし、そのあと、タンム卿のような事前確認や「お手合わせ」で姫の特異体質が尋常ではないことを知ると、その時点でお断りになる殿方が、大半だったのです。
ましてや、蹴っ飛ばしたのに許してくださった殿方は、今までいらっしゃいませんでした(※特殊な趣味の方を除く)。
「誠実っていうか、お人よしなんじゃないでしょうか」
感慨にふける姫の着替えを用意しながら、バンシルが言い放ちました。
「でも、不幸中の幸いでしたね。タンム様が確認なさった足が靴下に大穴の開いた方だったら、穴があったら入りたいどころか即破談でしたよ、は・だ・ん。」
「…バンシル、ひどい…」
そう言いながらも、姫は自分の「姫らしくない」振る舞いに打ちのめされて、また枕にのめりこみました。
「これを機会に、穴の開いた靴下をみみっちく履くのはやめることですね。さあ、そろそろほんとに起きないと、あの無礼な従者が来てしまいますよ」