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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第23章 はじめての果物細工講習
「バンシル。『従者』ではなく、『マイスター』とお呼びなさい」
それにマイスターが来るのは午後だから!と言うと、姫は布団に別れを告げて起き上がり、鏡台の前の椅子に座りました。
そして、三段ある引き出しの上から二番目を開けて、小さな箱を取り出しました。
蓋を開けると、そこには、姫が昨日作ったリンゴの葉っぱと、サクナの白鳥がしまわれていました。
「はいはい、マイスター様ですね、マイスター様。確かに、細工物は素晴らしいですけどね」
バンシルは姫の髪に櫛を入れながら、箱の中身にちらりと目をやりました。
この箱は、昨日の晩餐のあと、サクナがこっそりバンシル経由で届けて寄越したのです。
「でも、『スグリ姫様がスイカを取りに行ったときの忘れ物だ。人に知られたくないだろうから、くれぐれもこっそり渡してくれ』っていう、こそこそした渡し方が、気に入りませんね。
そもそも、タンム様のお見合い相手である姫様に物を教えようなんて、考えること自体が、非常識ですよ」
「だからー、弟子入りは、私が無理矢理頼んだんだってば」
「だからって、ねえ。タンム様と違って普段は愛想のかけらもない癖に、妙な下心があるんじゃないかと思われてもしょうがないですよ」
「そういう風に思われるからって、最初断られたもの。しつこくお願いしたら、バンシル以外には絶対言わないって条件で、やっと引き受けてくれたのよ」
それにマイスターが来るのは午後だから!と言うと、姫は布団に別れを告げて起き上がり、鏡台の前の椅子に座りました。
そして、三段ある引き出しの上から二番目を開けて、小さな箱を取り出しました。
蓋を開けると、そこには、姫が昨日作ったリンゴの葉っぱと、サクナの白鳥がしまわれていました。
「はいはい、マイスター様ですね、マイスター様。確かに、細工物は素晴らしいですけどね」
バンシルは姫の髪に櫛を入れながら、箱の中身にちらりと目をやりました。
この箱は、昨日の晩餐のあと、サクナがこっそりバンシル経由で届けて寄越したのです。
「でも、『スグリ姫様がスイカを取りに行ったときの忘れ物だ。人に知られたくないだろうから、くれぐれもこっそり渡してくれ』っていう、こそこそした渡し方が、気に入りませんね。
そもそも、タンム様のお見合い相手である姫様に物を教えようなんて、考えること自体が、非常識ですよ」
「だからー、弟子入りは、私が無理矢理頼んだんだってば」
「だからって、ねえ。タンム様と違って普段は愛想のかけらもない癖に、妙な下心があるんじゃないかと思われてもしょうがないですよ」
「そういう風に思われるからって、最初断られたもの。しつこくお願いしたら、バンシル以外には絶対言わないって条件で、やっと引き受けてくれたのよ」