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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第23章 はじめての果物細工講習
その日の午後、人目が少なくなる時間。
「宜しくお願いします、マイスター!」
スグリ姫の部屋でひっそりこっそり、第一回果物細工講習会が開催されておりました。

「よし。では早速だが、今日はリンゴの細工の基本だ」
サクナはそう言いながら、持っていた箱の蓋を開けました。

「わあ、薔薇だー!!」

この前作ったのと同じ緑の葉っぱが、薔薇の花に添えられています。

「ちょっと見て、バンシル!リンゴの薔薇!」
「リンゴが、薔薇?」
掃除中だったバンシルは訝しそうにこちらを見ましたが、姫が箱から薔薇の乗った皿を慎重に取り出す様子に、目を丸くして近づいてきました。

「へえ…ほんとに、薔薇ですね…」
「でしょー!すごいでしょー!!」
「これは煮リンゴですか?従者様」
まるで自分のことのように自慢げに言う姫に答えず、バンシルは薔薇の製作者に質問しました。

「そう「違ーう!」
「「は???」」
バンシルに答えるサクナの言葉をスグリ姫がぶった切り、質問者と回答者は思わず、???という顔でスグリ姫を見ました。

「バンシル。従者様ではありません。マイスターですよ」
「あー」
そういえばそこは謎のこだわりだった、とバンシルは今朝の会話を思い出しました。
そこに、サクナが割って入りました。

「いや、バンシル、様…は、生徒じゃねぇし」
「…あ、それもそうね。じゃあ、サクナ様って呼ぼうか」
「いや、様って柄じゃ…今はタンムも居ねぇし、堅苦しいのは勘弁してくれ」
「じゃあ、サクナで」
「姫様、ちょっと待ってください。私の方は様付けされてるのに、呼び捨てはちょっと」
「じゃあ、お互い呼び捨てってことで決定!はい、練習して!」

強引にまとめられ、二人は、よろしくサクナ、よろしくなバンシル、と言い合いました。
姫はその様子を見てにっこり笑って、「で、煮リンゴだっけ?」と、自分がそらした話を力業で元に戻しました。
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