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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第24章 はじめてのお手合わせ
姫の様子を見たタンム卿が、上着を持って姫の後ろに回りました。
「上着をこうして掛けておいたら、お脱ぎになりやすくはないですか?」
そう言って、持っていた上着を、肩にかけてくれました。
「あ…ありがとう、ございます」
スグリ姫は、肩に上着がかけられたことと、じっと見つめていたタンム卿が背中側に回ってくれたことで、ほっと息をつきました。
今もじっと見られているのでしょうが、目の前から見られているよりは、だいぶ落ち着きます。
姫は、上着を肩にかけたまま、下着の肩紐を抜きました。
もう袖を通しても下着を脱ぐ妨げにはならないので、一旦上着に袖を通して、羽織ることにしました。
(えっと、次は…前のリボンを解かなきゃ)
胸の前で組まれて通されているリボンに手をかけて、蝶結びの結び目を引こうとしました。が。
「姫」
「はい」
タンム卿が、独り言のように言いました。
「お顔が見えないのは、淋しい物ですね」
「はい?」
姫がなんと答えていいのか戸惑っているうちに、部屋を見回したタンム卿が、そうだ、と手を打ちました。
「良し。続きは、あちらで致しましょう」
「あちら?」
こちらへ、と背中を押されて連れてこられたのは、お手合わせの後に身繕いをするために置いてある、白い鏡台の前でした。
「ああ、ほら。思ったとおりだ。ここならお互いの顔が、良く見えます」
「ええ、」
確かに、姫の後ろに立っているタンム卿の顔も、鏡に映っていて、よく見えます。
端向こうは機嫌よく言いました。
「これは、『お見合い』なのですから。こうでなくては」
ねえ?と言われ、姫は曖昧に頷きました。
「これでこそ、万事宜しいというものです。では、続きを」
「…はい」
にっこり促されて、姫は胸のリボンに手をかけました。
解こうとして、ふと、前の鏡を見て。
タンム卿に鏡越しに、じっと見つめられているのに気付きました。
(あっ、また、)
先程タンム卿が背中側に回ったことと場所を移ったことで、一度視線が外れて、落ち着いたのですが。
再び見られていることで姫の全身にまた熱がかっと回り、リボンを持った手が細かく震え始めました。
「おや…こちらも、お手伝いした方が良さそうですね」
「え?あ、」
タンム卿は後ろから手を伸ばして、姫の両手を握りました。
そして震えている姫の手からリボンを外し、するりと結び目を解きました。
「上着をこうして掛けておいたら、お脱ぎになりやすくはないですか?」
そう言って、持っていた上着を、肩にかけてくれました。
「あ…ありがとう、ございます」
スグリ姫は、肩に上着がかけられたことと、じっと見つめていたタンム卿が背中側に回ってくれたことで、ほっと息をつきました。
今もじっと見られているのでしょうが、目の前から見られているよりは、だいぶ落ち着きます。
姫は、上着を肩にかけたまま、下着の肩紐を抜きました。
もう袖を通しても下着を脱ぐ妨げにはならないので、一旦上着に袖を通して、羽織ることにしました。
(えっと、次は…前のリボンを解かなきゃ)
胸の前で組まれて通されているリボンに手をかけて、蝶結びの結び目を引こうとしました。が。
「姫」
「はい」
タンム卿が、独り言のように言いました。
「お顔が見えないのは、淋しい物ですね」
「はい?」
姫がなんと答えていいのか戸惑っているうちに、部屋を見回したタンム卿が、そうだ、と手を打ちました。
「良し。続きは、あちらで致しましょう」
「あちら?」
こちらへ、と背中を押されて連れてこられたのは、お手合わせの後に身繕いをするために置いてある、白い鏡台の前でした。
「ああ、ほら。思ったとおりだ。ここならお互いの顔が、良く見えます」
「ええ、」
確かに、姫の後ろに立っているタンム卿の顔も、鏡に映っていて、よく見えます。
端向こうは機嫌よく言いました。
「これは、『お見合い』なのですから。こうでなくては」
ねえ?と言われ、姫は曖昧に頷きました。
「これでこそ、万事宜しいというものです。では、続きを」
「…はい」
にっこり促されて、姫は胸のリボンに手をかけました。
解こうとして、ふと、前の鏡を見て。
タンム卿に鏡越しに、じっと見つめられているのに気付きました。
(あっ、また、)
先程タンム卿が背中側に回ったことと場所を移ったことで、一度視線が外れて、落ち着いたのですが。
再び見られていることで姫の全身にまた熱がかっと回り、リボンを持った手が細かく震え始めました。
「おや…こちらも、お手伝いした方が良さそうですね」
「え?あ、」
タンム卿は後ろから手を伸ばして、姫の両手を握りました。
そして震えている姫の手からリボンを外し、するりと結び目を解きました。