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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第25章 二度目の果物細工講習
「どうかしたか?」
姫の動きが止まったことに気が付いて、サクナが姫に問いかけました。

「…ううん」
姫はサクナから少し離れ、くるっと振り向いて、言いました。

「やってみる。なんで白くなったか、分かったから、」
そして、オレンジとナイフを持ち直して、皮を剥いていきました。

(やだ)

ざく、ざくっとオレンジの皮が厚く剥け、果肉が現れます。

(やだやだ なんで)

今度は、白いところまで剥けているようです。

(これは違うのに なんで今思い出すの)

剥けてはいるのですが、皮の厚さは、厚くなったり、薄くなったり、ガタガタでした。

(無理に頼んで教わってる最中にこんなこと思い出すなんて ものすごい失礼だ)

やがて、三分の一ほど剥けた頃、左手に握られたオレンジから、ぽたりと雫が垂れました。

(失礼で 恥知らずで 余計なことばっかり考えてる 私なんて弟子失格だ )

姫の目には、自分が剥いているオレンジが、ゆらゆら揺れたように見えました。


「止めろ」

「え?」

そう言われて、姫は、顔を上げました。
オレンジは、まだ半分ほどしか剥けていません。
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