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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第26章 女子会は踊る
「…緊張しましたわ」
王と王妃との謁見の日の午後。
スグリ姫の部屋に、弟ハンダマ王子の婚約者であるレンブ姫をお招きして、バンシルの淹れたお茶を楽しんでおりました。

「母上にお会いになってお疲れでしょ、レンブ」
スグリ姫はもうすぐ義妹となるレンブ姫を、優しくねぎらいました。

「いいえ、ちっとも!」
レンブ姫は飲んでいたお茶のカップを握り締め、頬を紅潮させました。

「ハンダマ様から、王妃様はお話になるのが不自由でいらっしゃると伺っていたので、粗相をしたらどうしようって不安だったんです。だけど、お目にかかったら、そんなことは吹き飛んでしまいました」

自分の興奮でお茶がこぼれそうになっているのに気付いたレンブ姫は、カップをテーブルに置きました。
そして両手を顔の前で合わせ、うっとりと微笑みました。

「本当に、お会いできて、夢のようでした…お優しく、暖かく迎えてくださって。嬉しくて、涙が出そうでした」
そう言っている間にも潤んできた目を伏せて、レンブ姫はお茶を一口飲みました。

「私、いつか、王妃様のような女性になりたいです」
「ありがとう。母上がお聞きになったら、とても喜ぶと思うわ」

レンブ姫の打ち明けてくれた素直な母への憧れは、スグリ姫の胸を温めました。
ハンダマ王子とスグリ姫の母である王妃は、王妃となった後に病を得て声を失いました。
かつての王妃を知る者――スグリ姫の乳母であるバンシルの母のベラなどの話では、王妃の声は小鳥の囀りのように愛らしく美しく、聴く者を魅了せずには置かないほどの美声だったということですが、スグリ姫もハンダマ王子も、母の声を耳にしたことはありませんでした。

(とりわけ、お父様はお母様のお声にでれでれだったって噂だけど。お声が無い今だって、十分でれでれだわよね)

王妃との謁見がいかに素晴らしかったかを話し続けるレンブに相槌を打ちながら、スグリ姫は自分が今日レンブ姫たちの後に、王と王妃に目通りした時のことを、思い出していました。
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