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道案内
第1章 道案内

勢いで思わず肩を掴んでしまった。
背の高い男だった。女と同じ、20代後半と見て取れる。
男は目を丸くした。が、女の必死な様子を察したのか、優しくにこりと微笑んだ。
「何ですか?」
「道を教えてください!」
いいですよ、と男は答えた。女はコートのポケットから一枚のメモを取り出し、男に差し出した。
ここに行きたいんです、と女は告げた。
若者世代を席巻するスマートフォンを25歳の彼女は全く使いこなせない。重度の機械音痴なのである。だから今日も、目的地のメモ片手に家を飛び出してきたのだ。
「ここなら分かりますよ。よければ一緒に行きましょうか」
「本当ですか!?」
オーマイゴッド! 神がいる!!
ありがとうこざいます、ありがとうこざいます、と女は何度も頭を下げた。

