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道案内
第1章 道案内

「彼氏、どんな人?」
男が訊いてくる。女は嬉しそうに答えた。
「背はおにーさんと同じくらい! で、すごく優しいの!」
「へぇ」
「んでね、ヒロキがね。あ、アタシの彼氏、ヒロキって名前なんだけど。
アタシがこんないきあたりばったりで気分屋なもんだからさ、いつも心配して見守ってくれてるんだァ!」
男はくすりと笑った。口元にえくぼができる。えくぼ、可愛い。
「本当に彼氏のこと好きなんだね、君」
えへへ、と女は少し照れながら頷く。
「今日は実はさ……彼氏の家に挨拶に行くんだぁ」
「結婚の?」
「そう……だからすっごい緊張しててさ」
女は胸に手を当ててさすった。
「しかも道に迷うし、やばい、どーしよう!って思ってたんだけど」
そう、先程まで絶体絶命のピンチだったのだ。けれど────
「おにーさんに会えてよかった!」
この人がいなかったらどうなっていたことか。神様に感謝したい気分だ。

