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道案内
第1章 道案内

「ありがとう、おにーさん。なんか上手く行く気がしてきた!」
「うん、ならよし。はい」
ポン、と背中を叩かれた。女はびっくりして立ち止まる。男は目の前の家を指差した。
「着いたよ」
「あ……」
女はそろそろと表札を見た。“田中”と掘られている。間違いない。彼氏の名字だ。
ついにこの時が来た。来てしまった。
……あぁまずい。緊張がまた戻ってきた。
急に心細くなり、女は振り返った。男は離れたところで立っている。
「お、おにーさぁん」
女は思わず男の元へ駆け寄った。
「がんばれ」
「う、でもぉ」
「見てるよ」
「え?」
「君が入るまで、ここで見てるから」
「え!?」
「君のこと、ほっとけない」
男は笑った。少し寂しそうな笑顔だ。

