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あの星に届かなくても
第3章 非日常のくぼみ

 しかしながら、症状に合った薬を正しく選ぶことで第二類医薬品でも充分に対応できる。近年では、軽度な身体の不調は自ら医薬品を使用し治療に努める『セルフメディケーション』の考えが推進されてきていることもあり、ドラッグストアなどにおける登録販売者の担う役割の重要性は高まっている。


――「なんでこんな田舎で店長やってんの」

――「勿体ないねぇ」


 山口の言葉を思い出し、宗介は、はっ、と小さく息を吐いた。少しばかりの劣等感を、今でも心の隅に残しているのは事実だ。


――「本当に辞めるのか? 将来なくなるぞ」


 女手ひとつで育ててくれた母が病に倒れたことをきっかけに、大学中退と故郷に帰ることを決めた二年次の終わり。学部の友人の一人が、宗介にそう言った。
 勿体ない――山口が言ったように、彼は純粋にそう思っただけなのかもしれない。だが宗介は、家庭環境にも金にも恵まれたお前になにがわかる、と、喉まで出かかった言葉をぐっと呑み込んだ。無意識に抱いていた羨望が、嫉妬に変わった瞬間だった。

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