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あの星に届かなくても
第4章 過ちはまどろみの中

 宗介は、玄関に足を踏み入れた。扉が完全に閉まると、背後の雨音が一瞬にして遠ざかる。現実から切り離され、どこか遠くへ追いやられるようだ。
 暗闇の向こうに消える紗恵を見送り、靴を脱いで家に上がる。風呂場あるいはトイレに続くであろう扉を両脇に認めつつ、狭い廊下を進む。
 奥の部屋が明るくなり、ピッ、となにかの電源を入れる音がした。紗恵がエアコンをつけたのだろう。

「失礼します」

 一応言いながら中に入ると、脱いだ上着を片手に奥に隣接する部屋の引き戸を開け入っていく紗恵の姿が見えた。おそらくそこが寝室だ。
 間取りは1DKといったところか。DK部分は比較的広く、キッチン前に簡素なダイニングテーブルが置かれているほか、コンパクトな二人掛けソファとローテーブルでリビングスペースも確保されている。しかし、夫婦の暮らしにはやはり少々狭いように思える。
 白を基調としたシンプルなインテリアで、綺麗に掃除されているというよりは、単に物が少なく、散らかるほど使われていない無機質な印象を受ける。紗恵が半年前の六月に越してきたというのはおそらく本当だろうが、夫の存在は不明確だ。

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