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あの星に届かなくても
第4章 過ちはまどろみの中
帰ろう、と宗介は自分に言い聞かせた。ラグの上に落ちている服を拾い上げ、それを彼女に押しつけ、すぐにここを出よう、と。だが肝心の身体が言うことを聞かない。ソファに糊でもついているのかと思うほど、背中が貼りついて離れないのだ。
「私はこの計画を成功させるためにやるべきことをやり遂げて、もう一度あの人と暮らすの」
いつになく重々しい口ぶりで言った女が、静かに振り返る。伏せられた目から、透明なしずくが落ちる。
「あの人と……」
そう呟いた女は、泣いていた。唇を震わせ、大粒の涙をこぼしながら、後ろ手でブラジャーのホックを外す。ぶるりと揺れる、美しい豊かなふくらみ。
戸惑う暇もなく与えられるその光景に、宗介は脳内に充満する淫猥な思考と必死に闘った。たかが女の裸体が、こうも冷静さを失わせるのか。だが下半身はとっくに、いつもより獰猛な反応を示している。
その腕から肩紐がするりと抜かれ、ブラジャーが落とされる。女は大きな双丘を揺らして一歩近づくと、宗介のひざの上に跨った。異常なまでの肌の白さにふさわしい、薄桃色の輪の中心がいやらしく蕾を膨らませている。宗介は生唾を飲み込んだ。しかし、本能的な身体の反応を理性が押し込めようとする。
「……やめろ」
「やめてほしいなら、どうして逃げないのよ」
笑うわけでも、怒るわけでもなく、女は言った。その瞳には憂いの色が差し、翳(かげ)りをみせる。すでにその頬は乾いていたが、涙の通った跡がくっきりと残っている。