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あの星に届かなくても
第4章 過ちはまどろみの中
「だめ、離して。もう遅いのよ。わかってるでしょ」
宗介の手を撫でながら諭すように囁き、女が強引に腰を落とす。分身の先端に蜜口を押しつけ、入るか入らないかの力加減で擦り、焦らす。まるで理性を試しているかのように。
少しでも自ら腰を突き上げれば、無防備な分身はその沼の奥底まで容易に呑み込まれてしまう。そうすれば、最後に白い欲を放つまで解放してはもらえないだろう。
「ごめんね……」
女が哀しげに呟いたその言葉の意味を、瞬時に理解することはできなかった。男の虚しい欲望を奪うことに少しは抵抗を感じているのか、とも思った。しかし、その虚ろな目は宗介を通り越してほかの誰かを見ているようで――。
「ごめんね、慧子ちゃん」
その名前を耳にした瞬間、目の前で腰をくねらす女の顔に、慧子の愛らしいそれが重なった。
「……っ」
頭を殴られたような衝撃に一瞬にして現実に引き戻され、宗介は力任せに女をソファに放り投げた。
「きゃっ……もう、なにするのよ!」
髪を乱しながら振り返った裸の女を無視して立ち上がり、荒い呼吸を繰り返しながら心を静める。淫夢から醒めた脳が身体の熱を冷ましていく。
「ちょっと、市川くん」
「…………」
ずらされたボクサーパンツの前に手をかける。硬さも大きさも未だ和らぐことなく、下着の中におとなしく収まる気配のない猛りに触れた。憐れな分身に下着を被せ、宗介は力なく嘲笑を漏らした。
「コーヒーになにを入れたんですか」
落ちている服を無作為に拾い上げ、後ろに投げ捨てながら尋ねる。しばらく間を空けて聞こえたのは、深いため息と、「別になにも」という呟きだった。
見え透いた嘘に呆れながら、テーブルの上にある眼鏡を手に取り、かける。クリアになった視界の中で、白いマグカップに少量残されたブラックコーヒーに視線を落とした。