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あの星に届かなくても
第4章 過ちはまどろみの中
◇◇◇
愛車を飛ばして十五分――隣町にあるアパートに帰る頃には、宗介の分身はすっかり萎えていた。
新築アパートの九畳1K。なんの変哲もない男の一人暮らしの部屋だが、東京で同じ条件の部屋を借りたら家賃は二倍かかるだろう。
高校卒業まで母と暮らした古いアパートは、ここからさらに車で二十分ほど離れた比較的栄えた町にある。都会ではないが田舎でもない、住みやすく交通の便もいいところで、東京には新幹線一本で一時間もあれば行ける。だから、大学入学を機に離ればなれになっても母とはいつでも会えると、当時はそう思っていた。
部屋に入るなり上着を脱ぎ捨てベルトを外し、宗介はすぐに脱衣所に向かった。
服を雑に脱いで洗濯機に放り込み、浴室に入る。シャワーの蛇口を捻ろうとしたところで眼鏡を外し忘れていることに気づき、煩わしさにため息をついた。脱衣所の洗面台に眼鏡を置いて再び浴室に戻ると、今度こそ熱いシャワーを出して頭を下げた。
紗恵に撫で回されてヘアセットが乱れた頭をがしがしと掻きながら、彼女が口にした言葉を思い出す。
――「男の人しか持っていないものを、ほんの少しだけ頂戴するの」
そうして彼女は性行為に及ぼうとした。
――精液……精子バンク……。
直感的に頭に浮かんだ言葉に、宗介は愕然とする。
「狂ってる」
小さな呟きはシャワーの音にかき消された。本当にそんなものをあんなやり方で無差別に収集しているのだとしたら、間違いなくまともではない。
――警察に通報するべきか。いや、まず相手にされない。
心の中で自問自答し、宗介は顔を上げた。熱いシャワーが胸板を打つ。