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甘党な愛
第10章 十

 この声は、八雲……!?

「……!?」

 背筋を凍り付かせながら、体を起こしてバッと振り向く。すると思った通り……すぐ後ろに八雲が立っていて、絶句した。まさか今、私のお尻蹴った……!?

「またボロ切れみてぇな下着見えてんぞ」

「見えるわけないだろ……!ジーパン履いてるのに!」

「俺が見えたって言ったら見えたんだよ。嫌なもの見せた慰謝料払え」

 座っている私を冷たく見下ろして、当たり屋のようなことを言ってくる。というかこいつ、本物の当たり屋に違いない。

「そんな事……警察に被害届出すからな!」

「うるせぇぞ……」

 勇気を出して反論したがすぐに睨み付けられ、被っている赤いニット帽を首までずぼっと引っ張られると、びくびくと震え上がった。

「っ……!」

「こうしてるとスパイダーマンみたいだな。一生しとくか?」

「い、嫌……!」

 ニット帽が顔を覆い視界が真っ暗になることより、八雲の存在が怖すぎる。



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