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甘党な愛
第13章 十三
* * *
それから数日間、私は炎が燃え付きたように、メイドの仕事をぼーっとこなしていた。今までに失恋したことは何回かある。その度辛い思いをしたけど乗り越えてきたんだから……今回だって大丈夫。
「……」
そう心の中で言い聞かせるのに。午前10時。広間で掃除機をかけながら、八雲のことばかり考えてしまう。
「酷過ぎじゃないか?アイツ……」
もっと優しくフルことは出来ないのか。あんな冷たく……トラウマだ……。
「……」
そのままぼーっとドアの前で掃除機をかけていると、
「椿ちゃん、ちょっと良い?」
恵がドアから広間へ入ってきて、掃除機を止めた。
「恵……何?」
「庭にある桜の蕾が一つだけ開いたんだ。見に来てよ」
「桜が……」
恵がニコッと微笑むと、ぼーっとしたまま掃除機を床に置いて、広間から出ていく恵の後を追った。