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甘党な愛
第16章 十六
「恵も葎も、何であんなこと言うんだ!」
「俺は八雲を励ます為に言ったんだけど……」
「でも……」
八雲のあんな顔は初めて見た。悲しそうだった。恵は励ます為に言ったんだろうが、葎は……。
「八雲君、結婚無くなったからって、何で屋敷に帰って来たんだろう?別にもう自分の家に帰って良いんでしょ?」
「えっ……そう言われてみると……」
葎の話を聞くと、私は頷く。親と仲が悪いんだろうか……自分の家に帰りにくいのか?
「……」
無言で考えていた。そんな私へじっと視線を送る恵と葎。二人共無表情で、怖い。
「何だ……?」
「別に……もう俺は関係ないことだから」
「……?」
葎の言葉に不思議になるも、
「椿ちゃん、俺、絶対離婚しないよ!」
恵の言葉を聞くと、一瞬呆然とした。……離婚しないって……何で!
「急に何でだ!」
「だって俺の好きな人、椿ちゃんだしぃ~。結婚したいの椿ちゃんなんだから、折角結婚出来てるのにわざわざ離婚したくないよ」
「でも!」
恵の婚約者が見つかるまで籍を入れておく約束だった。恵が他の人を好きにならないと、籍を抜いて貰えないってことか!?
「椿ちゃん、俺今日からは絶対椿ちゃんと一緒に寝るから」
首に腕を回され、恵の真剣な声が耳元ですると、私は背筋を凍り付かせる。前より本気のような。何で……。
「俺は……三人を見物しとくよ」
焦りながらも、葎の冷淡な声だけが聞こえていた。