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甘党な愛
第19章 十九

「まさか、椿さんが藤咲社長の娘だったなんてね……」

「絶対に言うなよ!」

「分かったってば。でも、何で言わなかったの?それに何で書店でバイトを?」

「それは葎もだろうが!もしかしてお坊ちゃんかとは思っていたが、何で書店でバイトを?」

 テーブルを挟んで葎の前に座ると、質問する。

「俺は……親からの過剰な期待に嫌気がさして。それに何でも家政婦がしてくれるから何も出来ないことに気づいたんだ。だから一回自分のことは自分でしてみようって、家を出たんだ」

「偉いな……葎」

 葎の言葉に、凄く感動した。家を出た理由が、私とは大違い……。

「で、椿さんは?」

「私は……」

 すぐ葎から質問されると、口ごもる。言えない……。馬鹿馬鹿し過ぎて。過去を思い出したくもないし。

「……」

「良いよ。無理に言わなくても。食事しようか」

 私が無言でいると、気をきかせて葎が料理を食べ始める。テーブルの上に並んだ品数豊富な料理達。嬉しい筈なのに、私はあまり気が進まなかった。



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