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甘党な愛
第20章 二十
とりあえず……。
『とりあえず、元気です』
心配を掛けないようにしないと。
『帰ってくるんだよね?』
『うん』
『良かった』
恵とLINEを続けると私は携帯をポケットに直し、今度こそ部屋から出ようとする。だが……コンコンとドアをノックされると、一瞬固まった。
「……」
誰だ?……その答えはドアが開くと、すぐに分かることになった――……
「椿、久しぶりね」
「ママ……」
「星窪……やられちゃったのね。相変わらずじゃじゃ馬なんだから」
部屋へ入ってきた義母は、ドア前で倒れている星窪を見るとため息を吐く。そして、
「結婚する気がないのなら、これ書いてくれる?」
無表情で、私に何か差し出してきた。……何かの書類だ。これは……。
「分籍届……?」
「我が家の戸籍から除籍して欲しいの」
書類に書いてある文字を見て呆然とする私へ、ママは冷たく言い放つ。……除籍って。分籍って。
「……パパも、同意の上なの?」
「当たり前でしょ。貴方のような勝手に家を出て行く子なんて、私達にはいらないわ」
「……」
相変わらず冷血に話すママの言葉を聞いて、私は無言で歯を噛み締めていた。