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甘党な愛
第9章 九
* * *
広間に入ると恵は私の手を握ったままソファへ向かい、ソファの前に立つと私へ優しく微笑んだ。
「座って」
「……うん」
そして促されるがままソファに座る私の右隣に座り、明るく話し掛けてくる。
「こないだはありがとう。婚約者のふりして貰って助かったよ。椿ちゃんのこと男って紹介してごめん……」
「……もう良いから」
何度も謝られると、逆に申し訳なくなってくる。男と言われたぐらいで怒る方が、器が小さいような……。
「俺親から無理矢理結婚させられそうになってここに逃げてたんだ。もう住んで半年ぐらいだけど、親は諦めてなくて。一君使って、何度も親の選んだ相手と結婚させようとしてくるんだよね」
「そうだったのか……」
「だから男が好きって言えば親が諦めてくれると思って、椿ちゃんが男だって言ったんだ」
「それで……結婚はもうしなくて良いの?」
真面目に話す恵へ、私も真剣に質問する。恵も大変だったんだ……そりゃ親が決めた相手より、自分が好きになった人と結婚したいと思う筈だ。今の話を聞いて、恵に同情する。
「とりあえず今のところ拒否出来てるけど、またその内一君使って何かしてくるかもね……」
「恵……」
寂しそうに笑う恵の姿を見ると、ちくっと心が痛んだ。