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キミを愛シテ溺れてる
第5章 *キミを愛シテ溺れてる 3
この筆箱の模様は風子の作ったお菓子が入っていた袋に似ている。
懐かしさを感じながらもそれを手渡す。
「……あっ、ありがとうございます!」
筆箱を受け取ると、俺に目を向けず小さくお辞儀をして去って行った。
それは知らない人に向ける態度と同じようだった。
数日後。俺の友達の海田が部活を作るようで、転校生である風子を勧誘してきて俺の元に連れてきた。
「初めまして、乙羽 風子です。よろしくお願いします」
転校してきた風子はまるで別人だった。
演じている違和感はないから、やはり記憶を失っているようだ。
現に俺に“初めまして”と言ってから名乗ってくる。
部活動申請用紙に書かれていた名前では、なぜか苗字が“小神”から“乙羽”に変わっていたから最初はそっくりさんなのかとも思った。
でも、顔、髪色、身長、声も全く同じ。