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園主の嫁取り(くすくす姫サイドストーリー)
第3章 長老会議
「それは……」
サクナはイチジクの皿を見て、眉をひそめました。
「申し訳御座いませんが、お帰りになってからのものは、私の独断で厨房から譲り受けました。都へ行かれる以前の物は、特選品として領主様に納められたものを、ご子息のタンム様より頂いて参りました」
クロウはサクナに許しを請うようにお辞儀すると、説明を続けました。

「レシピは同一、材料も同じです。もちろん、お作りになった時期は違っておりますが、大きな違いでは無いでしょう。都に行かれる前と、お帰りになった後のものでございます。お召し上がり下さい」

(そんな筈は……)
(レシピは代々のものだ。それこそがこの家の財産なんだ、変える訳が無え。それに、諳んじられるほど、何百回と無く作った物だ)
(同じレシピなのに、味が違うなんて事は)


「なんと、」
「……はっきりと違いますな」

「何っ!?」
長老達の言葉に、サクナは顔色を変えました。
「これは、お話にならない」
「由々しき問題ですな」

「嘘だろ……」
「サクナ様も、どうぞ」
クロウはそう言うと、サクナの前に二枚の皿を置きました。
見た目はそれほど変わらない、美しいイチジクのプリザーブが乗せられています。
一方を半分に切って断面を確かめ、もう一方も切ってみました。
どちらもこれ以上無い出来です。
次に、一方のイチジクを口に入れました
そして、もう一方を。

「!っ!!!!!?」

(まさか……嘘だろ)
(こいつの言う通りだ……なんで気付かなかったんだ、)

「お気付きではなかったのですね。食べ比べなどなさらないので、当然かもしれませんが。」
呆然としているサクナに、クロウは淡々と言いました。

「お分かりですか?貴方様は、変わったのですよ。」

クロウの言葉に何も返せず、呆然とイチジクを見ているサクナに、長老達は言い立てました。
「このような違いを見せ付けられては、もはや結論は明白でしょう」
「このような物を作る者の判断を支持するわけには参りますまい」
「嘆かわしいことだ。この話を認めたら、果樹も同じことになる」
「やはり、しっかりした判断の出来るものが差配せねばなりませぬな」

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