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陽向の恋
第6章 六
* * *
一週間後の水曜日。朝から快晴で旅行日和だと、陽向から一時間前にLINEが来ていた。それをアパートのリビングで見て羨ましく思った。今日は社内旅行。場所は四国の有名な温泉地で、集合時間は7時。もうそろそろ皆、飛行機で出発している時間だ。だが……
「三浦、迎えに来たぞ!」
何故いる、加地課長――……
「ごめんね、苗ちゃん。課長が苗ちゃんのアパート教えろってしつこくて……」
インターフォンが鳴った後、玄関のドアを開けて硬直した。目の前には私服姿の加地課長。と、課長の後ろからひょこっと顔を出す花菜の姿。
「休むなって言っただろうが!ほら、行くぞ!次の飛行機予約したから!」
マジか。この人、マジで言ってんのか。腕を引っ張られながら、私は無表情で抵抗する気も失う。
「荷物は?三浦、着替えぐらい持ってこい!」
「ちょっと……行かないって言ってるんですよ!離してください!」
「行かない?ならこのまま俺とデートするか?車に押し込んで連れ回すぞ」
「……」
「俺とデートすんのが良いか?」
漸く我に返って抵抗した。それなのに、半ば脅しのようなことを言われて、ニヤリと微笑まれて、心が折れる。
「……持ってくりゃ良いんでしょ!荷物!」
「ごめんね、本当に、苗ちゃん、ごめんね……!」
このクソ課長!そう思いながら準備する為、部屋へ歩き出す。後ろからは相変わらず花菜の申し訳なさそうな声が聞こえてくるが、花菜は悪くない。悪いのは、この強引な加地課長だ。
「5分で準備しろよ~?」
続けて聞こえてくる自己中な言葉に、私は寝室へ入りながら腹を立たせた。