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陽向の恋
第6章 六
……――そのまま準備を終えて、アパートから出る。するとアパートの前に停めてある加地課長の車が目に入った。課長と花菜はもう運転席と助手席に座っている。私が乗ればもうGO!GO!な状態。
「本当に嫌だ……」
ポツリと呟くも、私は車に乗り込むしかなく。
「来たか。よし、空港まですぐだからな」
「苗ちゃん、温泉いっぱい入ろうね!」
後部座席へ座って話し掛けてくる二人へ返事をしながら、コートのポケットから携帯を出した。
「うん……そうだね……」
陽向にLINEしておこう。怒るかもしれないけど。……というか、絶対怒る。向こうで会った瞬間、陽向から鬼の様な形相で睨まれることは予想がつく。
『ごめん……加地課長がアパートに迎え来た……今空港に向かってる……』
そう送って、携帯をポケットに直そうとする。……だが、すぐにピコンと携帯が鳴り、私はまた携帯画面をみる。
『何なのそれ!あのクソジジィ!』
『本当ごめん……花菜と回るから、機嫌悪くしないでね』
折角の旅行だし、楽しまないと。そう思いながら陽向のメッセージを読み、冷や汗を滲ませつつ返信した。すぐにまた返事が来て、
『俺と回ろう!』
そう書かれているとは思わなかったが。……えっ?!陽向と回ろうって。回ってたりしたら、付き合ってるってバレないかな……。加地課長のこともあるし、もうバレても良いんだけど。
『でも花菜と回りたいから!』
続けて返信して返事を待つが、急に既読も付かず返事が来なくなる。飛行機に乗ったのかな……。私は携帯をポケットに直すと、前を向いた。加地課長とバックミラー越しに目が合うと、ドキッとしたが。
「三浦、温泉一緒に入ろうな!」
「課長、それセクハラですからね……」
「冗談に決まってんだろ!」
能天気に笑う課長。その姿に私は行く末を暗示させられ、ため息を吐いた。