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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第4章 四週目
(大きな仕事をしているお家…そんなお家に入るのが、ほんとに、私でいいの?)
スグリ姫はこの地から出た事も無ければ、城以外で暮らしたことも無いのです。
この地のことであれば少しは分かっていますが、ここを離れたら、慣習や風俗も違うでしょう。
そのような地のそのような家に、サクナの伴侶として入ったとして、何かできることが、あるのでしょうか。
(私、何もしてあげられない…ただ、傍に居ることしか)
(今回一緒に連れて行って貰えなかった理由のひとつも、忙しい時期に何の役にも立たないからだもの)
(それでも一緒に居たいと思うのは、だめなことなの?)
ただ傍に居られさえすれば、こんな不安も生まれ無かったのです。
それなのに、当人が傍に居ないということは、どんよりするのは止めようと決めたスグリ姫であっても、どうしようもなく遣る瀬無い思いにさせられることでありました。
スグリ姫は、馬車に揺られながら目を閉じて、答えの出ない迷路のような物思いに、ひっそり耽っておりました。
「ただいま帰りました」
「ごきげんよう!お久しぶり!!」
「まあまあ、いらっしゃい、姫様!お帰り、バンシル!」
家に着いたバンシルとスグリ姫は、玄関口で待っていたバンシルの母親のベラに、両腕でぎゅっと抱きしめられました。
「ベラ、お元気そうね!」
「もちろんですよ。姫様のご結婚が決まられたんで、毎日ますます張り切ってますよ」
おめでとうございます、とベラは言い、姫は有難う、と答えましたが、その時の姫の様子に、ベラはおや?と思いました。
「…さあさあ、入って下さいな。赤ん坊に会いますか?それとも先にお茶を飲みましょうかね」
二人はベラに促され、家に入って行きました。