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第4章 四週目

「ああ、姫様。私は気にしないんで、良かったら居てください。」
「え、でも」
スグリ姫が遠慮しようとすると、母親は赤ちゃんに似た顔で、にこっと笑いました。

「将来のお勉強になりますよ？それにお乳を飲んでるこの子、とっても可愛いんですよ」
そう言うと母親は胸をくつろげて、赤ちゃんにお乳を含ませました。
「わー…」
んくんくと音がするくらい元気にお乳を飲んでいる赤ちゃんと、それを見つめる母親を見て、姫はうっとりしました。
「…女神様と天使、って感じねー…」
「みんな天使だよ。あんたたちもこうやって育ったんだ」
ベラがバンシルとスグリ姫の頭を撫でてそう言うと、母親もこちらを向いてにっこりしました。

「ほんと、可愛い…あれ？」
スグリ姫が見ているうちに、最初はお乳を一生懸命飲んでいた赤ちゃんが、飲んでいないほうのお乳をもにゃもにゃ触ったり、ぺちぺち叩いたりし始めました。
「あー。お腹一杯になって、飽きて遊び始めましたね」
バンシルの言葉に、姫は驚きました。

「遊ぶの！？お腹一杯になると、遊ぶの、赤ちゃん！？」
「毎回じゃないですけどね。あと、お乳がよく出ないと齧ったり」
「えええええ！！！」
今度は母親にそう言われ、スグリ姫は、赤ちゃんについて初めて聞く話の数々に、衝撃を受けました。

「知らなかった…赤ちゃんも、ちゃんと一人の人なのねー…」
「お勉強になったようで、何よりですよ」
母親はくすくす笑いながら身じまいをし、赤ん坊を抱いて背中をとんとんしました。
「あ。寝そう」
「お腹一杯になったんで眠くなったんでしょう。この子はほんとに手がかからなくって」
最初の子は寝るまでに一暴れしてましたけどね、という話を聞いて、姫ははーっと感心の溜息を吐きました。
「おかあさんって、大変なのね…」
「大変なのも、楽しいですよ」
赤ちゃんの母親はそう言うと、にっこりと美しく笑いました。