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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第3章 三週目
大臣はお茶のカップを置くと、座りなおしてスグリ姫に言いました。

「スグリ姫様。サクナ殿の事を、彼自身からどのくらいお聞きになっていますか?」
「どのくらい、って」
そう聞かれて、姫は言葉に詰まりました。

彼は自分のことをあまり語る方ではありません。
姫が聞いた憶えがあることは、タンム卿の父親が現在領主を勤める南の地の出身であること、果物園をやっていること、血の繋がった家族は居ないが現在家族と言える立場の人々からは結婚の許しを貰ったこと、くらいです。
姫がそう思い出しているのを見て、大臣が先に口を開きました。

「本来でしたら彼が自分で話すべきことです。恐らく彼の地に姫を連れて帰って、説明をするつもりだったのでしょう。ですが、私は彼を止めた。彼にとっては不本意かもしれないが、私と王は貴女様に私達の考えを、彼より先に話すことを決めました。」
大臣はそこで話を止めて姫を見たので、姫は頷いて、話の先を促しました。

「彼の素性について…彼は王にも私にも、自分は何も持たない、果物園の園主だと言いました。姫様にも、そうですね?」
「ええ」
「それは半分は正しく、半分は正しく無い」
大臣は眉を寄せ、溜息を吐きました。

「王と私は、姫様の結婚について、どのようにするのが一番姫様のためになるのか、話し合ったのですよ。
王も、最初に闇雲に反対したことを、反省しておられる。お后様にも窘められましたし、そもそもご自身のことを棚に上げてあのような理由で反対をされるなど、私からすれば笑止千万です。
身分の差など、馬鹿馬鹿しいものです。ではありますが、世の中ではそれを重んじる者達も少なからず居ります。私も王も、あなたが可愛い。あなたが後ろ指を指されるような結婚は、させたくない」
「でもっ」
姫が何かを言おうとしたのを、大臣は手で遮りました。

「まずは、話を終わりまで聞いて頂きます。…私は独身だ。跡継ぎも居ない。彼の事も接した限りでは好ましい青年だと思っている。もしそれが貴女方の為になるのであれば、彼を養子に取ってあなたを娶せることも出来る」
大臣は姫がじっと聞く気になった様子を見ると、姫の前に出していた手を下ろしました。

「…ところが、彼の素性を調べてみて、それは到底無理だと分かりました」
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