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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第3章 三週目
「彼は確かに果物園の園主です。但し、それはそう聞いた者のほとんどが想像するようなものではない。…彼はタンム卿の従者として出向いてきたのでしたね?」
「ええ」
「あの二人は家柄や血筋等ではなく、純粋に個人としての社会的な格だけで言えば、ほぼ同格だったのですよ」
「え、」
「タンム卿は彼の地の領主のご子息です。言わば政治の中枢を担う家の者です。そしてあなた様の婚約者殿は、彼の地で最も大きな産業を担う家の当主です」
「…どういうこと?」
「果物園は、単なる果物園ではないのです。」
大臣は空になったカップに、最後のお茶を注ぎました。
「彼の地はここから最も遠い自治領です。中央には情報が届きにくい。土地も豊かで、特に大きな問題も無い。なので、私達は気付きませんでした。彼は彼の言う通りの、単なる果物園主だと思っていました」
「ところが、そうでは無かったのです。私は王の命を受けて、彼のことを調べに彼の地へ出向きました。
そこで分かったことは、彼が当主をしている家は、果物そのものは言うまでも無く、そこから派生する複合的な産業の中心でもあるということでした」