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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実
 
「うわあ、景色が綺麗だねー」

 はしゃぐ由奈さんに、巽は微笑んだ。

 巽と由奈さんは、本当に絵になる美男美女だ。
 現役専務と、専務夫人になる女性であるし、もしも由奈さんが怜二さんと今でも浮気をしているというのなら、こうした恵まれた環境を作る巽のなにが不満なのだろう。

 巽ほどではないが、怜二さんだってイケメンだし、異質なのはわたしだけ。わたしだけが、この麗しい絵図に入れないと思えば、疎外感を感じる。
 今まで卑屈になどなったことがないのに。

「杏咲、海老フライあげる。好きだろう? 代わりに卵焼きをちょうだい?」
「広瀬くんいいなあ、じゃあ巽くん、由奈にも卵焼きくれる?」

 怜二さんの爽やかで優しい笑みと由奈さんの無邪気な笑顔は、本物なのだろうか。

 わたしは巽の言葉を否定しながら、猜疑心を持って眺めるしかできず、そして巽の肩に頭をつけて、無防備に眠る由奈さんを微笑ましいと見ることも出来ずに、ずっと唇を噛みしめて窓の奥の景色を睨み付けるようにして見つめていた。

 巽と怜二さんは〝溺愛〟と化した企画の話をしたりと、ふたりはにこやかに会話をしていて、初日巽に怒鳴り込んだという怜二さんはどこにもいない。巽の能力を信頼しているようだが、時折わたしに話を振ってきたり、頬を触ってくる回数が多く、その度に巽の無感情な目も向けられるから、正直やめて欲しかった。

 怜二さんが浮気をしていないのなら、わたしのぎこちない様子や、ちらちらと巽を見てしまう目線で、わたしの心が巽に向いているとわかってしまうかもしれない。わたしが、彼と別れようとしていることも。
 
 今日のこの旅行が、怜二さんの恋人としての最後の努めになる……と思うと悲しく心が晴れないのは、怜二さんに対しての気持ちも、まだあるからなのだろう。

 それなのにわたしは、怜二さんを裏切り、巽を好きになってしまった。
 別れたい理由を、怜二さんと由奈さんへの疑いにだけはしたくない。
 わたしの心は、怜二さんのことなど関係なしに、遅かれ早かれ巽に奪われてしまっていただろうことは、変わらない気がするから。

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