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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実

「な……」
「姉と弟ではなく、こういうことをしたかったんだ、お前と」
巽は切なそうな眼差しで顔を傾け、後頭部に手を添えると、しっとりとした唇を重ねてくる。
カタンと缶ビールが置かれる音がして、代わりにビールの味がする巽の唇が、角度を変えてわたしの唇を貪り、ねっとりとその舌がねじ込まれる。
「たつ……ちょ……んんっ」
「アズ……ん……アズ」
夢見心地なのは、花火を見ているせい?
それとも巽から伝わるアルコールのせい?
同じリズムで重なる唇が愛おしくて、どんな卑猥な音も、周りの音がかき消してしまうから、興奮してどんな声を漏らしたのかももうわからない。
盛大な拍手が遠くから聞こえて、視線を絡めたまま唇が離れる。
巽は伸ばした手でわたしの肩を抱き、頭を彼の肩に凭れさせた。
「……こんなの、弟じゃねぇだろ。姉貴と繋がりたいとおっ勃てて、しかもお前以外には反応しないなんて、お前には……シスコンの域を超えて気持ち悪いだけだろ。絶対いけない感情だと振り切ろうとして……逆に追い詰められれば深みに嵌まった」
姉が弟にこんな邪念を抱いているなんて露見したら、気持ち悪いと思われるとわたしも思い、巽を振り切ろうとすればするほど好きだと思い、我慢しないといけないと思ったら辛かった。

