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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実

「だから俺は……いつかお前に襲いかかるのが怖くて、お前に……気持ち悪いと嫌われたくなくて、お前を拒み、その存在を無視して、遅くまで家に戻らず外で遊んでいたんだ」
「……っ」
「だけど家を出ても、お前の顔が見たくて、結局家に戻ってきてしまう。お前が俺を嫌って離れても、お前に男が出来て抱かれようしていても、それでもお前を求めて……。俺がなれない立ち位置にいるお前の恋人を妬んで恨んで憎んでお前にあたり、結局怖れた通り、いやそれ以上の被害が出た」
――むかつくんだよ、俺の気も知らねぇで、お前!
ねぇ、わたしと巽は……同じ想いを抱いていたというの?
「だけど俺は後悔はしていねぇよ。お前を抱くことが出来たから。とは言いつつも、荒れたけどな。お前が恋しくて、すべてをぶっ潰したのは俺だから。その責めは負うつもりではいたけれど……」
巽は、目に花火を映しても深淵でも見ているかのような昏い目をしてから、わたしに向き直る。
「アズ……、お前が好きだ」
巽は切実な眼差しで、瞳を揺らして言った。
「忘れようとしても、我慢しようとしても。お前がどんなに俺を嫌っていようとも、俺はお前が欲しくてたまらねぇんだよ」
――俺だって、男なんだよ!!
「今でも……、好きでたまらない」
巽の小刻みに震える手が、わたしの頬に添えられた。
「お前の言った通りだ。〝溺恋〟……奪いたいほどお前が欲しい。随分と我慢してはきたけど、もう心も体も歯止めが利かない日が近く来るのが、俺にはわかる」
――たとえ相手に恋人があろうとも、奪ってしまうような……激しく燃えさかるような恋情の終焉。
「お前と初めて会った瞬間から、俺は――お前に恋して、溺れている」

