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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実

「そんなはずねぇだろ。お前の部屋のゴミ箱から、びりびりにされた俺の手紙があったんだぞ!?」
「本当に知らないって。巽から貰ったのは、わたしが追い込みの泊まりがけの塾に行く前、机の上に置いていた一輪のアムネシアだけ。それを花瓶に水を入れて出て行ったはずなのに、戻ってきたら机の上から落ちて、枯れちゃったけれど……。本当にあれは悪かったと思っていたわ。机の奥に置いて出かけたつもりだったのに、まさか花瓶ごと落下しているとは思わなかったから」
「はあ? お前がアムネシア千切ったんだろう? だから花びらが散っていて……」

 巽は、あの無残に散っていたアムネシアを見たのだろうか。
 わたしがそんなことをしたと思って、アムネシアをくれた彼はどう感じたのだろう。

「……だから! アムネシアが好きなわたしが、そんな可哀想なことをするはずないでしょう? 巽から貰えなくなっても、自分でアムネシア買って来て飾っていたくらいなんだから」
「あれは、俺への嫌がらせ兼牽制じゃ……」
「そんなはずないでしょう?」

 すると巽は神妙な顔をして考え込んだ。

「巽?」
「あ、いや……。俺てっきり、お前に嫌われて拒絶されていると思っていたから。俺の前で彼氏とキス始めるし、お前にとって俺は、まったくどうでもいい存在なんだと思っていたから」

 巽が髪を切って学ランを着た時、わたしの中で巽は弟ではなくひとりの男になった。
 そんなわたしの身勝手な思いで受験を利用して距離をあけていたのを、巽なりに歩み寄ろうとしてくれていた。彼なりにシグナルを発していた。

 それなのに、わたしは――。

「どうでもよく、なんてない……」

 わたしは項垂れてぽろぽろと涙を零した。

「わたしだって、巽を意識しないように必死で……」
「え?」

 思わず口走って慌てるわたしを聞き流してくれない巽は、わたしを抱き上げて彼の膝の上に座らせ、腰に両手を巻き付けて逃がさないようにした。

「アズ。俺が嫌だったわけではないのか?」
「……」
「本当に手紙もアムネシアも、お前がわざとちりぢりにしたわけではなかったのなら、なんで俺を遠ざけた? なんで急に態度が変わった?」
「……っ」
「……アズ。もしかしてお前も、俺のこと男として意識していた?」

 図星をさされて、直に心臓をぎゅっと掴まれた心地になり、わたしは顔を引き攣らせる。
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