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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実

「そんなの、見たか聞いたかだろう、普通」
自嘲気に笑う巽には、揺るぎない自信があるようだ。
これは、人伝の間接的な証拠を握っているわけではないと直感的に思う。
だったら、巽が直接その現場を見たか、直接本人から聞いたか、どちらに転んでも決定的で最悪な選択肢のひとつだというのか。
……それは可能性の問題ではなく。
「怜二さんは本当に、由奈さんを抱いていたの?」
現実だと思えば、すっと心が冷え込んだ気がした。
「……お前は、なんと言って貰いたい?」
それが答えだ。
それが、わたしが見ていなかった現実だ。
そんなものかとやけに落ち着いている自分には、もっと由奈さんに対する嫉妬や怜二さんに対する独占欲はないのだろうかと、自分自身を不思議に思う。
穏やかなりにも怜二さんを好きだと思っていた心は、幻想だったのだろうか。
わたしはただ、巽に出来なかった恋愛をしたかったのだろうか。
……だとすれば、最初からわたしは怜二さんを裏切っていた。
だからショックを受けるのは筋違いだ。
後から割り込んだわたしの方が、偽りの関係だったのかもしれない。
「巽は、その事実を知って平気なの?」
「言っただろう、元から由奈を好きではないし、結婚の形を利用しただけ。俺の心はひとつだ」
まっすぐとしたその瞳に、心が歓喜に痺れる。
「お前はどうだ? お前は裏切っている男をこのまま愛して、結婚したいと思うのか!?」
……巽に、怜二さんと結婚すると嘘をついた。
そのことに対して、嘘を信じている巽は声を荒げる。
「わたしは――」
「ああっ、そこいい。優ちゃん、それいいの――っ」
「わ、わたし……」
「イク、イク、イッちゃうよぉぉぉぉ!」
「……わた、し」
「優ちゃん奥、駄目っ、そんな太いもので、子宮をごりごりしちゃ駄目ぇぇぇぇっ」
……わたしと巽は、互いに気まずそうに視線をそらせる。

